お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

幸せをもらった

食後、ぼんやりしていたら、新聞の営業マンがインターホンを押した。

この前、お試し一週間をとった。今、我が家は夫が単身赴任したのをきっかけに新聞を取っていない。息子は今時の子代表らしく、スマホでチェックしているからいいと言う。そこにお試しどうですかと電話があったので、とりあえず一週間、入れてもらったのだ。

その一週間が今日で終わるので、どうでしょうと言う勧誘だなと察知したので「今は体調を崩しているのでお会いできません。」とお断りする。

すると「新人一年目で、このまま帰れないんです、お礼の品だけでも」と粘られた。

購読の意思はないですよと庭に通した。

息子と3歳しか違わない青年が東京に出てきて、一人で頑張って営業をしているものの、ノルマも達成できていなくて怒鳴られているのだと言うことがダイレクトに伝わった。それはやり手の営業マンのトークとは程遠く、どちらかというと下手。うちの理系の夫の話を聞いているのと似ている。

21歳。すっかり自信をなくしておどおどしている垢抜けないこの不器用な青年。息子とダブる。

「三ヶ月だけ」

約束して購読した。三ヶ月経って、それ以上の購読をゴリ押しされたら、君の名前で事業所に文句言いますよ。

鍵を失くしたと思った30000円。神様へのお礼だ。

彼は泣きべそをかいて、何度もお辞儀をして、帰っていった。

騙されたとは思わない。私の中では彼は真実だ。彼が私によって助けられたと泣き笑顔になったなら、この還元がいつか息子に戻ってくれたらいいと思ったのだ。

嬉しそうに洗剤やら、お米五キロやら、ビールやら、美術展のチケットやとばらまいていこうとする彼に

「ここ一番ってときにとっておいたほうがいいよ」

と言って、洗剤だけくださいと言った。それでもと、美術展のチケットとノート三冊とカバンからあれこれ出して、置いていった。

なぜか私の方が爽やかな幸せをもらった。