お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

息子の成長

息子が今日は休みで家にいる。

歯医者に行くのに、半袖か、長袖を折り曲げようか、聞いてくる。

「どっちでもいいんじゃない、でも、相当暑いよ」

天邪鬼だから、何を言ったところで結局、自分の思い通りにするのは、旦那ゆずり。意見を求めているようで、実はもう、決めている。幼稚園をどこに通うかという頃からこれまで、ずっとそうやって習い事も部活も進路でもなんでも自分の思う通りにしてきた。長袖、半袖どっちを着るか、人の言うこと、聞くわけがない。

夫だったら

「知らないよ、どうせ言うこと聞かないくせに。好きにすればいいじゃん」

と、言う。なぜか、夫にだけ、突き放した言い方で言える。

出会った頃、家族はもちろん、会社でも友達にも、相手を傷つけることが怖くて自分を押し殺してヘラヘラ笑っていた私が、どういうわけか、この男のやることなすこと、全てが気に入らず、声を荒げて怒った。自分でもびっくりしたが、会うたびに、私はプリプリわがまま女になる。

こっちは本気で怒っているのに、「顔を真っ赤にしてる」と言って笑われた。

私の般若の面を見て、呑気に笑うこの人を逃したら私は一生、どこでもいい子ちゃんで生きることになる。彼との結婚は、迷うことなく決めた。

今でも、彼と話すときが一番気を抜いている。居心地は悪かったり、特にいいというわけでもなく、何も感じなかったりするけど、一緒にいて楽だ。

息子が18になった。二人暮らしももう、3ヶ月経つ。

目の前で倒れたり、小学校時代、満足に外に連れて行ってやれなかったり、挙げ句の果てに、危篤になったり、まだまだやわらかい息子の心をどれだけ私が乱したろうと思うと、それを修復しないとという思いと、これ以上、きつい言葉や突き放したような表現で不用意に彼を傷つけてはいけないという私自身の謝罪の気持ちが絡み合う。

壊れ物に接するように辛抱強く、できるだけ優しい言葉で接してきた。

それが最近、少しづつほどけつつある。

二人の生活の中、夫という逃げ場がないからかもしれない。彼が青年らしくたくましくなってきたことに安心しているのかもしれない。

「オイ〜、めんどくさがってるだろ〜。長袖、やっぱ暑いか、好きなんだけどな」

私の机のそばで、絡む息子に、言ってみた。

「うるさいなぁ!このあっついのに!好きにしろ!」

息子はゲラゲラ笑った。

あ、もうここで笑ってくれるんだ。もう、大丈夫なんだ。

・・・知らないうちに夫に似てきている。