私の
ほうじ茶を作った。
朝、目覚ましがわりのラジオから「ご自宅でもほうじ茶は作れますよ」と聞こえてきた。うつらうつら耳に入ってきたのは、今、ほうじ茶の売り上げが伸びているという話題から、お茶に詳しい人が番組に呼ばれ解説している声だった。
「へぇ、そうなんですか」
「ええ、炒ればいいわけですから。煎茶をフライパンで炒ればほうじ茶です」
ああそうか。なんで気がつかなかったのだろう。あの、美味しくない煎茶をほうじ茶にしてみよう。
朝食後、ラジオで聞いた通り、平皿に茶の葉を広げ、レンジで2分加熱し、それからフライパンに移し、火をつける。
焦さないよう、木べらでかき回しながら中火で炒る。
何も考えず、茶葉のだけをじっと見つめる。
やがて、湯気が立ち始めた。弱火にしてさらに炒る。
丹念に丹念に、ただひたすら、木べらを動かす。
しだいに、お茶屋さんの店内で漂うあのいい香りが台所に広がりはじめた。
同時に葉の色がぐんぐん茶色くなっていく。
パチっと焦げた葉がフライパンから飛び出した。
そこからさぁっと一気に色が濃くなりだしたところで、フライパンを火から下ろした。
窓を開け炒り上げた茶葉の熱を取っている間も、風に乗ってほうじ茶の芳ばしい香りが入ってくる。
冷めたところで、わら半紙の上に移し、缶に入れて蓋を閉めた。
できた。
さっそく、いそいそと湯を沸かし、木の匙で二杯、急須に入れて飲んでみた。
「おお。ほうじ茶だ」
なんだろう、この嬉しさは。
梅干しを一つ入れ、もう一杯飲んでみる。
「おいしい・・・」
確かめるように声にした。
ただ、炒っただけなのに、なぜこんなに愛おしいのだろう。
これは、私のお茶だ。