穴蔵から出る
ついに、穴蔵から出るときが来た。
納戸を基地として嬉々としてきたのだが、ついに限界。暑いのだ。
冷風機も持ち込んで、準備万端のつもりでいたのだけれど、尋常じゃない暑さだ。意地はっている場合じゃない。
よく考えたら、鬱で引きこもっていた時、とても居心地がよくて、狭いところに篭る安心感が私を癒したが、あれは冬だった。小さな窓一つに、パネルヒーターの空間は、熱が充満して、暖かく、外界から遮断されていたからこそ、心安らいだのだ。
熊の冬眠のようなところだった。
熊は夏、洞穴に篭ったりしない。
しぶしぶ、観念して、無印で買った机をずるずる引っ張って寝室に持ってきた。
ここなら冷房も効くので温度は快適。
ただなぁ。夫が帰ってきて、3時過ぎまでここで寝てる時、ここで読書とか、パソコンとか、気分が乗らないなぁ。その時のための、納戸だったのに。
卒業しなさい。引きこもりから。もう、大丈夫でしょ。
そういうことなのかな。
心の囁きはいつも、本質をつく。
読みかけの本を3冊、納戸の本棚から持ってきて、机の上に置いた。
夕方、涼しくなったときのために、念のため、デッキチェアとミニテーブルを置いておく。本棚も、秋に備えて、そのままにした。
ここから見える夕焼けが好き。ここでどこかの家の夕飯の匂いや音を感じるのが好き。
ホッとする時間は、この時間帯だけでいいや。
一日中、篭るより、メリハリがあっていいかもしれない。
1日の終わりに。
夏本番前、熊は出た。