お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

違いのわかる女

息子が昨夜、風呂上がり

「俺のシャツがない」

とパンツいっちょで叫ぶ。

「置いておいたよ」

「これ俺のじゃない、親父の」

どっちだって同じじゃないか。適当に着てればいいのにと思うが、青年は親父のシャツを着るのは嫌なのだと怒る。

「それじゃあ階段に洗いあがったの、それぞれ置いておいたから、そこ見てよ」

それでもどれも俺のじゃないというので、それなら自分でタンスからとってくればと放っておいた。

プリプリドカドカ「なんで俺のだけなくなるんだ」、荒っぽく階段を上がり、納得いくのを着て降りてきた。

 

今朝、階段に昨夜腹立たしげに放り投げた白いシャツがごちゃっと丸まっている。

あいつめ。

クンクンクン

ふむ。

こっちも拾い上げ鼻にあてる。

クンクンクン。

あ、これは違う。

なんだちゃんと置いてあったんじゃない。

息子の匂いと夫の匂い。

おんなじ男の匂いでもトーンが違う。

母は嗅ぎ分けているのだ。

五月のイチゴ

イチゴ5つで1日分のビタミンC があるんだよ。

ほんとか嘘か、実家ではそういうことになっていた。

息子が風邪をひいた。

朝の皿に取り分ける。

イチゴのパックはなぜか上の段に大きいの、下の段には小粒で赤いのが詰まっている。

夫の皿に大きいのを三つ。

息子の皿には中くらいを5つ。

「あ、僕の、大きい」と喜ぶ父さん。

「俺の方が多い」と張り合う息子。

ふふふ。

実はイチゴは、このパックの下の段にある、

小粒でちょっと熟れすぎちゃったかなと

先っちょがうっすらピンクに柔らかくなり始めているのが

一番美味しいんだよ。

そしてそこは

母が食べる。