お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

違いのわかる女

息子が昨夜、風呂上がり

「俺のシャツがない」

とパンツいっちょで叫ぶ。

「置いておいたよ」

「これ俺のじゃない、親父の」

どっちだって同じじゃないか。適当に着てればいいのにと思うが、青年は親父のシャツを着るのは嫌なのだと怒る。

「それじゃあ階段に洗いあがったの、それぞれ置いておいたから、そこ見てよ」

それでもどれも俺のじゃないというので、それなら自分でタンスからとってくればと放っておいた。

プリプリドカドカ「なんで俺のだけなくなるんだ」、荒っぽく階段を上がり、納得いくのを着て降りてきた。

 

今朝、階段に昨夜腹立たしげに放り投げた白いシャツがごちゃっと丸まっている。

あいつめ。

クンクンクン

ふむ。

こっちも拾い上げ鼻にあてる。

クンクンクン。

あ、これは違う。

なんだちゃんと置いてあったんじゃない。

息子の匂いと夫の匂い。

おんなじ男の匂いでもトーンが違う。

母は嗅ぎ分けているのだ。