お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

音のない日曜日

結局、あれから猛烈な寒気とともに熱を出し、続きの漫画は断念。今日、這うようにして、痛い頭を抱えながら無念の返却に行く。

そういえば、高校三年の時、受験勉強に本格的に取り組んだ途端、やはり高熱を出し、一週間寝込んだことがあった。家族からは「体が本気で勉強を拒否したのだ」とからかわれ、馬鹿でもいいから、寝るようにと諭された。

あとちょっとというところで、ダウンして、仕方ないかとするこの、詰めの甘さは、いかにも私らしいなとおかしくなった。

 

帰宅して、食欲もないのでおせんべとチョコレートとみかんとお盆に乗せて、コーヒーと一緒にホットカーペットの上に置く。

放電の日が続いたので、今日はダラダラの日。

こういう気分の時に、外が雨というのは好きだ。家にこもりながら、しとしと濡れる庭が見える。ごろりとしながらテレビをつける。

しばらくすると、テレビの音も煩わしく、消す。

雨の音がもっと聞こえる。

最近、こういう音、聞いていなかったな。

目をつぶって、手足を伸ばし、仰向けになってじっとする。

いいな。今、幸せだ。

 

なぜだろう。刺激のない体力もない今日、満ちたりている。

ガッツだぜ

昔から全身全霊で人を励ますと、翌日、虚脱状態になる。

多分、自分を器以上に見積もって、力の限りを出しても、自分は大丈夫だと奢っているのだ。

小学生の時からそう。いじめっ子に対決を挑んだものの、最後は自分が大号泣する。

今日も朝食が入らなかった。どうしようもなく吐き気がして、ゼリーも飲み込めない。昨晩はもりもり食べて、食後にアイスも食べたというのに。一晩で私のメンタルに一体何があったのだろう。

・・・あ、食べ過ぎ・・・?

ビスケットとチーズを食べ、夫の荷造りをする。

夫は昨夜、赴任先への挨拶と下見がてら一泊の出張から戻ったばかりだが、向こうで相当の洗礼を受けたようで、帰宅するなり

「あ〜。俺と結婚してくれてありがとう〜。本当に家族がいてよかった」

を繰り返している。そして、また机にかじり付く土曜日。

今日は靴、台所の雑貨、ホットカーペットの洗濯。

「母さん、朝から動いてばかりいるね。少しはのんびりしな」

息子が言ってくれる。そう。私は忙しいのだ。

まだまだやらなくちゃいけないことが山積みで、さっさとこんな梱包終わらせないとならぬのだ。

三月のライオン。全12巻。ツタヤで借りて、明日、返却予定日なのである。昨年、喉の嚢胞をとる手術をするため、一週間ほど入院した時、はまった漫画。私は漫画はあんまり読まない方なので、暇つぶし程度の感覚で借りた。

映画化、決定!という文字に「映画になるくらいなら、面白いのであろうな」と半分、疑いつつ、借りたのだ。

ま、漫画だしなくらいに。

これが・・・切ない。もう。グイグイ、引き込まれた。

病室でいつ覗いても私が真剣に読み込んでいるので、看護婦さんにもしまいには

「今日はどこまで読んだ?」と聞かれたくらいに、引き込まれてしまった。

もう、この映画は絶対見るっ。そう、決めていた。

映画はもう、公開されている。キャストも、ドンピシャだと思う。もう、行きたくて行きたくて、たまらない。

夫が無事、赴任した暁には。

その前に、筋のおさらいをしないといけない。

映画化するにあたって、どこをどう、切って、脚色したのか、わかって観たい。

というわけで全12巻。

必死です。あと、3巻。

何度、単身赴任の準備と家事との合間で疲れ果て、投げ出そうとしたことか。しかし、そのたびに、「いや、ここで諦めたら絶対、後悔する。映画館で。」と自分を奮い立たせ、どうにかここまでたどり着いた。

これから買い物に行き、また、取り掛かるのだ。

頑張る。私は。

 

しかし、この意欲と根性とが、学生時代に発揮されなかったのか。

私にもこんなガッツがあったのだ。

祈り

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今年はじめまして、の桜です。朝、公園を散歩していたら見つけました。

毎年見ているのに、どうして桜にはこんなに思入れをするのでしょう。

どの花も同じなのに、梅や沈丁花の時も心が華やぎますが、この花は、いよいよ何かが始まるという幕開けのような、そんなそわそわした気にさせられます。あっという間に散るから、しっかり堪能しないとと気負ってしまうからでしょうか。

桜は桜。でも桜の咲く頃、あの時の私はこんな気持ちで桜を見ていた、あの時はこんな思いだった、あの時の桜は・・・と、自分の背比べをする物差しの花。

 

昨日は親友という言葉より、妹という方がしっくりくる知人を見舞いに行きました。会社で具合が悪くなり、仕事を抜けて病院に行くと、肺に穴が空いていたそうです。急遽入院。重症なので明日手術をするという決定に、動揺した彼女が私にメールをくれました。

「とにかく、行くよ、病院と病室教えて」

「いいの・・?来てくれる?」

意地っ張りで気の強いあの子が、助けを求めるなんて、嬉しかった。

私の入院生活も、無駄にはなりません。全身麻酔、部分麻酔、オムツ、たくさんの管、検査、40日間の間の経験を総動員して、彼女の不安に答えました。

「たいていの管は手術室から出てきたときに、もうつけられちゃってるから、そんなに心配しないでいいんだよ」

「なんだ、よかった。もう管をつけるとか、抜くとか。怖くて。それ聞いて安心した」

安心した彼女はいつもの鎧がなかった。

そこからどういう流れでそうなったのか、職場の空気が最悪なんだという話を始めました。

「女、5人で、ボスみたいのがいてさ。空気悪いんだ。一人、体壊して辞めちゃったくらい。いじめられてさ」

そして、今、その矛先が彼女に向かっている。はっきり言わないけれど、つまり、そういうことだった。そのやり方は、あまりに幼稚で、残酷なものだった。ストレスで胃に穴が開くというけれど、肺もそういうことてあるのか。わからないけれど、それが原因だと、顔も知らないその女性に怒鳴り込んでいってやりたい。

悲しかった。

彼女がこんなになるまで、私にこの話をしなかったことも。

何度も何度も会っていたのに。

時々、会社の帰りにふらりと来て、旅行のお土産を持ってきてくれたりした。あれは、あのときは。私は単純に、喜んで、ベラベラおしゃべりして、彼女を返した。あのときは痛手を負っていた日だったのか。

わかってやれなかった。ばかだなぁ。浅いなぁ。

そして、聞いたところで私に何も、なんにもできないことも悲しい。

笑顔で、どうってことないことのように彼女が話すから、私も、どうってことないことのように聞く。

「来てくれてありがとう。手術の不安、だいぶ和らいだよ」

「私も不謹慎かもしれないけど、久しぶりに話せて楽しかった」

手術の傷と心の傷と、癒えて欲しい。

今、このとき手術を受けている彼女がいろんなものと闘っている。

私は、ぐっと強く、祈る。