お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

祈り

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今年はじめまして、の桜です。朝、公園を散歩していたら見つけました。

毎年見ているのに、どうして桜にはこんなに思入れをするのでしょう。

どの花も同じなのに、梅や沈丁花の時も心が華やぎますが、この花は、いよいよ何かが始まるという幕開けのような、そんなそわそわした気にさせられます。あっという間に散るから、しっかり堪能しないとと気負ってしまうからでしょうか。

桜は桜。でも桜の咲く頃、あの時の私はこんな気持ちで桜を見ていた、あの時はこんな思いだった、あの時の桜は・・・と、自分の背比べをする物差しの花。

 

昨日は親友という言葉より、妹という方がしっくりくる知人を見舞いに行きました。会社で具合が悪くなり、仕事を抜けて病院に行くと、肺に穴が空いていたそうです。急遽入院。重症なので明日手術をするという決定に、動揺した彼女が私にメールをくれました。

「とにかく、行くよ、病院と病室教えて」

「いいの・・?来てくれる?」

意地っ張りで気の強いあの子が、助けを求めるなんて、嬉しかった。

私の入院生活も、無駄にはなりません。全身麻酔、部分麻酔、オムツ、たくさんの管、検査、40日間の間の経験を総動員して、彼女の不安に答えました。

「たいていの管は手術室から出てきたときに、もうつけられちゃってるから、そんなに心配しないでいいんだよ」

「なんだ、よかった。もう管をつけるとか、抜くとか。怖くて。それ聞いて安心した」

安心した彼女はいつもの鎧がなかった。

そこからどういう流れでそうなったのか、職場の空気が最悪なんだという話を始めました。

「女、5人で、ボスみたいのがいてさ。空気悪いんだ。一人、体壊して辞めちゃったくらい。いじめられてさ」

そして、今、その矛先が彼女に向かっている。はっきり言わないけれど、つまり、そういうことだった。そのやり方は、あまりに幼稚で、残酷なものだった。ストレスで胃に穴が開くというけれど、肺もそういうことてあるのか。わからないけれど、それが原因だと、顔も知らないその女性に怒鳴り込んでいってやりたい。

悲しかった。

彼女がこんなになるまで、私にこの話をしなかったことも。

何度も何度も会っていたのに。

時々、会社の帰りにふらりと来て、旅行のお土産を持ってきてくれたりした。あれは、あのときは。私は単純に、喜んで、ベラベラおしゃべりして、彼女を返した。あのときは痛手を負っていた日だったのか。

わかってやれなかった。ばかだなぁ。浅いなぁ。

そして、聞いたところで私に何も、なんにもできないことも悲しい。

笑顔で、どうってことないことのように彼女が話すから、私も、どうってことないことのように聞く。

「来てくれてありがとう。手術の不安、だいぶ和らいだよ」

「私も不謹慎かもしれないけど、久しぶりに話せて楽しかった」

手術の傷と心の傷と、癒えて欲しい。

今、このとき手術を受けている彼女がいろんなものと闘っている。

私は、ぐっと強く、祈る。