お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

約束

昨日の夜からモヤモヤしている。

二千円。もらうんじゃなかった。魂を売った気分で落ち込んでいる。

手を動かすことなく、彼女の部屋で彼女の脱ぎ散らかした服をたたむ私に、楽しそうにおしゃべりをしてくる。

仕事だと割り切って乗り切れた。いつもなら苛立ち、同時に自分がなんとなく惨めなうら悲しい気持で帰るのだ。

が、今回はそういった恨みがましさは一切、割り切れた。浮かんでは、仕事。浮かんでは仕事。

淡々と、適当に相槌を打ち、黙々と手を動かす。まるで優秀な家政婦のようだった。

姉は相変わらず喜んだ。お金をもらうからにはと気合を入れたので、いつもより綺麗になった部屋を見て「これから毎月、頼もうかな」と上機嫌だった。疲れっきていた私は、もうとにかく解放されたい。帰りたい。はい、2時間経ちましたね。任務完了。ここまで。と引き上げた。

綺麗さっぱり。なんの問題もない。

なのになんでだ。

惨めな気分に自分で自分をさせた。

私の魂が嫌っがっている。

もう、あれはやめてね。

あれするくらいなら、「疲れてるから、今日は嫌だ」って言ってね。次から。

 

魂。ごめん。

今度からそうするよ。

つい、期待を裏切らない自分を選んじゃったんだ。ごめん。もうやらない。

 

2000円

午前中、衣替えをした。夫が自分の衣服を全て持って行ったので、自分のセーターだけ。出す方も、息子は去年まで制服だったので、私のもの。

気に入っていた綿のスカートや綿のカーディガンとの再会。その場でスウェットと裏起毛のトレーナーを脱ぎ捨て、着替えた。

セーターを二枚洗い、あとは、たたんで、ケースにしまう。防虫剤がないな。隣にあったかなと聞きに行くと、姉が一人で二階の自室にいた。

「去年のでよきゃあるよ。取りにおいで」

助かった。部屋に上がっていくと、とっちらかった部屋で呆然としてる姉がいた。

姉は掃除ができない。本当に下手。

今日も、母に怒られて、帰ってくるまでにキレイにしておくように言われて掃除を始めたものの、あまりのひどさに、自分でもどこから手をつけていいのかわからなく、やる気も萎えていたところだった。

「これ、どうしよう・・あなた、今日、暇?」

じっと私を見る。そう。いつもこのパターンで手伝うのだ。そして、大抵、手伝い始めてると、姉はなぜか手を止めおしゃべりを始め、私ばかりが必死に片付け、翌日、熱を出すのだった。

疲れていた。芝刈り、どぶさらいに続いて、今衣替えをしたところの私は、これが済んだら、昨日録画したドラマと漫画でたっぷりダラダラするつもりだった。

それでも放っておけない。

ここでぐっとこらえて「いいよ。」と私が言い、「恩にきる、今度お茶おごる」と姉が言う。私は我慢しつつ、手伝う。

それって、私の本音じゃない。私はそんなに出来た人間じゃないんだ。

「いいわヨォ。バイトなら、喜んでするわよ」

「・・・2時間、二千円でどう」

「お受けいたします」

本当はお金をもらっても、疲れているから勘弁してほしかった。けれど、なぜか当たり前のように使われることに抵抗したくなった。

案の定、姉はその間、はしゃいでベラベラ喋り、たいして働かず、呑気だった。そして私は黙々と洋服をたたみ、埃を拭いて、本を片付け、机を整理し、掃除機をかける。

途中、時計を見る。あと30分。あと少しならなんとか頑張れる。二千円の分はしっかり働こう。

ゴミ袋3っつ。すごかった。

どっと疲れた。

でも、今日は恨みはない。だって仕事だもん。

お金ってすごい。

今日は自分で自分の労働を始めて金銭対価ありと認めた日。

季節が移った日曜日

窓を開けて二階のベッドで漫画を読む。

息子が腹減ったとやってきた。1時。

お昼ご飯を作る。昨日作りだめして冷凍した肉団子と油揚で親子丼。

夕飯の下ごしらえにササミ肉にフライの衣をつけてキャベツを刻む。大根と油揚の味噌汁もお味噌を入れる前まで。

ゼリー。乾いた喉につるんと冷たいゼリー。

あ。この感じ。季節が移った。そうだったこんな感じあったあった。

庭に出て玄関の門のドブさらい。昨日切った柴も袋に詰める。

買い物に行って、近所の人と立ち話して、帰ってフライを揚げて、お風呂に入る。

裸になって風呂の床を磨く。この開放的な感じも春。

少し冷えた身体を温めのお湯に入れる。ゾワッと鳥肌が立って「はぁぁ・・・ありがたいなぁ」。

洗濯物を取り込みながら、ベランダでたたむ。これも新しい季節の夕暮れのあの感じだ。終わったなあ。冬。

窓を開けっ放しでベッドでぼーっとする。

グランドからサッカーを応援する声が時折、わぁーっと聞こえる。

6時を過ぎてもまだ明るい。

時間がのんびりのんびり過ぎていく。