お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

食べちゃったの?

日曜日の午前。夫は例によって午後からテストで出かける。

朝からテーブルに最後の足掻きとテキストを広げているその横で、私は一足先に朝ごはんを食べていた。

息子もアルバイト、夫もこれから出かけるとなると午後はまるっと一人きりだ。さっさと夕飯の下準備をして今日は溜まっていた録画ドラマをみよう。

夫の朝昼兼用となるであろう食事をお盆にセットする。

オムレツ、昨夜のクリームスープ、納豆、ミネストローネの残りにマカロニを入れてチーズで焼いたもの、ご飯茶碗とみかん。

それから大根、白菜、じゃがいも、にんじん、舞茸、しめじ、油揚、ベーコン、鶏モモ肉を細く切ってブイヨンで煮るだけのスープを作り、冷蔵庫にあった豚ロースを低温で焼いたものに生姜醤油だれをなじませタッパーに保存した。

入院するとき、作り置いていった惣菜の中で好評だったこれは、要するに先に低温でじっくり柔らかく熱を入れ、後からタレに漬け込む生姜焼きなのだが、多少めんどくさいが、夜になってフライパンでガーっと急いで焼くよりも柔らかく、食べる直前に食べたい分だけ温めればいいし日もちもするので、便利で今でもよく作る。

あとはトマトでも切ってお豆腐やなんやかや並べればいい。

そこまでやってから、隣の母のところに用事があり出向いた。

「行ってくるよ」

戻ると、夫が食事を済ませ出かける準備の整ったところだった。

「ああ、ごめん、ご飯、置いておいたのわかった?」

「うん、わかった。全部食べた。ついでにお肉もいただいた」

お肉?

「お肉って、あそこのタッパに入れといた分?」

「うん。お腹空いてたから。蓋がどうぞってずれて置いてあったから・・美味しかったよ」

私の口調に何かを察知したのかやや早口で目をキョロキョロさせる。

見ると容器の中の肉は残り1、2枚になっている。

「でも5、6枚だよ、食べたの、ちょっとだけ」

「200グラムあったんだよ」

「え・・・」

ちょっとじゃない。しっかり食べた。

「やだぁ。あれ晩ご飯だったのに」

「そうなの?ごめ、食べちゃった。だって蓋ずれてたから、良かったらこれもどうぞってことかなって・・あ、急がなきゃ、急がないと。間に合うかな・・」

まるで漫画のようにアタフタ逃げるよう玄関に向かう。

「もう、ダメだ、もうやる気がしない。また1からやり直しじゃんかんよー」

柄の悪い女に絡まれまいとそそくさと靴を履き「それじゃ、行ってくるから」と家から出ようとする。

「もう今日は成城石井のハンバーグ買ってくるからね」

「買いなさい買いなさい、じゃ、行ってきますんで」

現場を後に夫はその場を去った。

冷凍庫をグルグル探す。成城石井なんてそんな贅沢するものか。今から行くのもめんどくさい。何か使えるものはないかとかき回す。

そこに母がやってきた。

あんまりの衝撃に今あったことを話すと一旦家に戻り

「ちょうどいいわ」

と差し出された。

「明日からハワイだから、冷蔵庫整理しなきゃって困ってたの。お肉買いすぎちゃったみたいで食べ切れないのよ。あげる」

見ると赤身の豚肉の焼肉用が230グラム。うちがいつも買うよりも数段お高いお肉。

これは生姜醤油などにつけず、ただ焼くだけがおいしいにきまってる。

夫、結果的に、でかした。