お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

お誕生日の子のお母さん

おとといの息子の誕生日祝いは無事に終わった。

Lサイズのピザ一枚にMが二枚。スパゲティー二種。これで大人5人足りるのか物足りないのか検討もつかない。余ったら翌日温め直せばいいやと念の為、エビフライとポテトフライをサラダとビールと並べて置いておいた。

「お誕生日、おめでとう!」

母のツッコミも、ちょっとずれたハイテンションではしゃぎすぎる夫も、全くマイペースの姉も、できるだけ引っ込んでいようと様子を伺っている私もいつもの通り。

みんなの会話のやり取りが頭の上を通過していく。

私の視線は息子の顔色、姉の表情、母の機嫌、夫のお酒の量を追いかける。

ああエビフライ、揚げてよかった。みんな食べてる。ピザもちょうどよかった。

ハイジのアルムオンジのようだった息子も好物で腹が満たされてくると笑みがこぼれ、教授の愉快なエピソードを披露する。

「まあご立派な先生なのに面白いわねえ」

母も上機嫌で相槌をうつ。

「息子ちゃんも将来そういう紳士になってね」

「俺はもう紳士だ」

「だからもっとちゃんとした大人の紳士にならないと。いつも昼過ぎまで寝てるようじゃダメよ、もうちょっと誰とでも仲良くしないとね」

「関係ねえし」

このやり取りも相変わらず。

違うのは照れて、みんなが「おめでとう!」と杯を掲げても「もう、こう言うのは今年でいいから」とボソボソ呟きながら薄笑いの息子の様子。まるで笑ったら損をするぞと決め込んでいるようである。

数年前までの満面の笑みで主役になりたがった少年はもういない。

「それではそろそろ・・」

姉が買ってきたケーキを冷蔵庫から出した。しっかり太いロウソク2本に小さいのが1本ついていた。抵抗するかなと少し迷ったが、それを差し火を灯しテーブルに運んだ。

夫がパチンと電気を消す。

「マジかよ。それ」

ブツブツ言う主役は素直に一気に吹き消した。

わー、おめでとおめでとと、もう一度、おきまりのように周囲はパチパチと手を叩く。

一連の決まった流れ。

どこにでもよくある光景。

それを自分が裏方で眺めている瞬間瞬間、幸福のランプが私の中でピカッピカッと光っていた。