お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

初めての挑戦

今日ははじめて作る料理に挑戦した。

メンチカツ。

キャべつと玉ねぎを刻み挽肉、卵、片栗粉、塩胡椒と混ぜ団子状にしてフライ衣をつけて170°の油で狐色になるまで揚げる。

母は作ったことがなかった。テレビで商店街の取材でメンチカツ、メンチカツと見たり聞いたりしても、実際食べたことがないから、それがどんなものかもよくわからない。

スーパーでできているのを買ってきて食卓にあげると息子がうまいうまいと食いついた。

「これ、お手製?」

「いや、ごめん、これは買ってきたの」

「いいからいいから、うまいんなら買ってきたってかまわんかまわん」

それ以来、夫のメタボ対策の献立で、若人にはちょっとボリュームが足りなかろうというときに、息子にだけ買うことが度々ある。

いついっても置いてあるメンチカツ。

コロッケやイカフライ、唐揚げと同じように定版で置いてあるということは、これは私が思っているよりも普通にお母さんが作る家庭料理なのかもしれない。

自分が食べたことがないからと、勝手に「たいていは買って食べるもの」と思い混んでいたが、ちがうのかもしれない。

私には絶対作れない・・・ってなもんでもないのかも。

これをマスターしたら。

いつか家を出た息子が「母さんのメンチカツ食いてえなあ」とか言われるようになっちゃったらカッコいい。

今のところこれといって母の味、お袋の味と誇れるものが無い私はぼんやり考える。

 

さっそく朝から玉ネギを200、キャベツを200、刻む。

今朝目ざめたときから「そうだ今日はメンチカツ」と張り切っていた。

野菜と同量の挽肉に塩、胡椒。胡椒もいつもはそこまでしないのに、わざわざミルで挽く。どうってことのない黒胡椒なのに、そのジェスチャーに、ここ、この料理のポイントね、っていうところにしようなどと、一人妄想する。

6個の肉野菜団子ができた。どちらかといえば野菜の合間に肉がある。が、なにしろ誰かの作っている工程を見たことがないので、この質感であっているのかどうかわからない。

野菜の水分のせいか、タネが緩い気もする。

もう少し粉を足そうか、それとも肉を足そうかと迷ったがレシピに忠実にした。過去、何度も途中まで本の通りにやってきて途中から自己流になにやら入れたり、食材を代用したりしてヘンテコなものを作った経験から知っている。まずは素直に忠実に。

たるったるの種にそうっとそうっと粉と玉子とパン粉をつけていく。

ゆるかったのもしばらくおいておくとしっとりそれなりにまとまった。やはりこれでいいらしい。

油を火にかけ、温度が上がってきたところでひとつひとつ壊れないように落とす。

ジュワッと景気のいい音ではなく、シュワわわわわ・・・と静かに細かい泡を出しながら沈んでいった。

じっと待つ。菜箸でつつきたいのをぐっとこらえ、表面が固くなるまでひたすら泡の様子を見る。

この謙虚さ。久しぶりだ。

慣れをいいことにこのところ「そろそろいいだろ」と勘に頼って料理をしていた。

こんなに真摯な気持ちで鍋に張りつくってしてなかったなあ。新婚のころの毎日真剣勝負で台所に立っていた頃を思い出す。

鍋から聞こえる音が高くなった。細かかった泡も大きなブツブツに変わってきている。

箸で触ると油の中でカリッ衣が固まっているのがわかった。

よし、引き上げどきだ。

乱暴に扱って崩れないよう慎重に取り出し網の上に下ろす。

あと残り5つも慎重に。気を抜いてはいけない。

台所中にお肉屋さんのコロッケと同じにおいが広がった。

これだ。この匂い。この匂いがするってことは成功に違いない。

熱が冷め実が落ちついたところで少しつまむ。

うんまい。

でもこれは本当にメンチカツなんだろうか。それがわからない。野菜肉団子カツなんじゃなかろうか。

なにしろ食べたことがないものだから。

今夜はメンチカツ。

誰がなんと言おうとメンチカツ。

 

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