名もなき家事
朝のテレビで名もなき家事というのをやっていた。
洗濯を取り込むとか風呂掃除とかそういった地味なものかと思ったらそうではなく、もっと、まさに「それも家事か」というような目立たない小さな手間の数々を指してそう呼ぶらしい。
大抵の家庭では主にそれは主婦の仕事になっていて、ほかの家族はやってもらっている意識すら持っていない。
だから主婦はモヤモヤする。モヤモヤが高じてくると腹が立ち、時にはガマンの限界がきてブチ切れる。
ゴミを出す・・ではなく、ゴミを集める、ゴミ袋を付け替える・・が名もなき家事。
トイレットペーパーの付け替え、芯を捨てる。
ペットボトルのカバーを外してボトルをつぶして捨てる。
麦茶の瓶を洗ってまた新しいのを作って冷蔵庫に入れておく。
洗濯する前に裏返で入っていた靴下を裏返す。
などなど。たしかに、そういうの、あるなあ。
これらは仕事をしながら家事も育児もする女性には「もうっ」て思う数々だろう。
わたしなんぞは専業主婦で体力もないから外出することも少ないので一日中のなかでんびりやればいいやと構えているので、そう気にはならないが、それでも体調わるく起きてきた朝に台所に飲み終わったペットボトルがコロンコロンと転がっていると「なぜできない・・」と、悪気なくそこに置いていった家族を恨めしく思う。
「おはよう」
そこにペットボトルの主犯である息子が降りてきた。
『この名もなき家事、どういうのがあるかといいますと、ペットボトルの・・・・』
テレビのアナウンサーがこれまでのおさらいをボードにまとめて説明していた。
「うちでもある現象です」
「はっはっは」
『シャンプーがなくなったよと言われると同時に間接的に詰め替えを要求される』
「これは俺やってるよな」
そう。シャンプーや歯磨き粉はさっさと自分で買ってきて入れ替えている。好みのものがあるのだ。
「ようするに家事は一日中切なく忙しいってことなんでしょ」
う。そう言われると。個人的なわたしに限ってはそうでもない。たいていどっかで手を抜いて、だからこそドトールに行った本屋で立ち読みしたりドラマを観たりブログ書いたりしているんだから。
「でもさ。俺も目立たず働いているんだ」
「なによ」
「こうして踊って見せて家庭を明るくしているのだ。これも名もなき家事」
そこに航空会社の機長飲酒に対して改善命令がだされたとニュースが伝えた。
「機長は几帳面じゃないといけない。機長はちゃんと記帳しないと」
「くだらない駄洒落にリアクションに困りながらも反応するのも名もなき家事」
「母さんのやらかすボケを突っ込むのも名もなき家事」
「家庭の平和のためにボケてみせているのも名もなき家事」
「うそだっ!それは嘘だ!それにしては多すぎる!」
・・・・・。
否めない。