お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

なんだかんだ言って

「明日親父が帰ってくる〜♪」

息子が昨晩鼻歌を唄い、ハッとしたのか急に

「キモい男が帰ってくる〜♪」

と付け加えた。

「わかるわかる。結局は嬉しいわけね。仲良しねぇ」

いつもやれ腹が出てきたから酒を飲むなだの、服のセンスが悪いだのと難癖つけて絡むくせに、なんだかんだ言いながら好きなのね。

「違う、あんなキモい男、帰ってきたらまたうるさくなる」

うるさいのは二人同時に家にいるからであって、お互い単独の場合は私と二人、どちらも実に静かなのだ。

夫は夫で息子に用もないのに「それいいな」「学校どうだ?」「今日はどこ行くの?」「そのお菓子、ちょっとくれ」と絡む。

実に静かな10日間が今日の夜で終わる。

「かあさんは?かあさんは嬉しいんだろう」

「わたくしですか?とんでもない。山のような洗濯物がやってくるんだもん」

「なんて言って嬉しいんだろ」

ここであんまり悪ぶるのもと思い

「嬉しいわヨォ。とっても。」

と照れもあって少し芝居掛かったわざとらしい返事をした。

「そう。それがいい」

すました顔で言われた。

へえ。。。

やっぱりそういう方が息子としては聞いてて心地よいものなのか。

時々息子は「なんであんなめちゃくちゃな奴と結婚したんだよ」と聞く。

その度に私は

「だって腹が立って怒った時に、可愛いって大笑いしたから、こりゃイケると思って」

と答える。

般若の顔をして大声を出したというのに結婚前の夫は指をさして面白がった。

「真っ赤になって怒ってる。かわいいなあ!」

そのとき思ったのだ。

あ、この人逃しちゃいけない。

結婚生活では絶対自分の醜いところを見せてしまう。感情的になったのを見て引かない人っていうのは安心だ。

「はいはい、なんだかんだ言って嬉しいんだろ」

嬉しいっていうか、安心ていうか、落ち着くっていうか。

・・・はっ!やられた。

元々は息子の浮かれた鼻歌から始まった話だったのにすり替えられて私が浮かれていることになったじゃないか。