靴墨ドバーン
玄関に黒の液状靴墨をドバッとぶちまけました。
出勤前ということをうっかり忘れるほど、あまりのことに呆然と見つめるばかり。
なにが起きたかはわかっているのに、適した対処に思考がまわりません。
固まるっていうのはああいうのを言うのだと思います。
出社しようと二階から身支度を終え降りてきた夫が惨状を目にし「あらららら」と言うまで黒々と玄関のタイルに広がったものを眺めていました。
タイルが先?
とりあえず靴磨かないと。
あ、でも早く拭かないとタイルに染みが残るか・・。
えっとえっとえっと・・・。
「ゴルフバックは大丈夫?」
え?
「あ、大丈夫だよかった」
タイルを拭いてくつのなかにも染み込んだのも吸い取って、あ、そうそう、新しい靴出さないと。
「いいからいいから、ゴルフバッグが無事なら・・トンさんは汚れてないの?」
「すみませんねぇ・・・あ、靴箱にも・・え?わたし?私はどうだっていいよ・・」
やはりタイルは時間との勝負のようだ。もう一度丹念と拭き取っていると夫が
「あの・・いい?」
出社したいのでした。
・・・そういや、ゴルフバッグの後だったな、私の心配は。