お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

腹一杯の

昨夜、夫からラインが。

「今夜、誘われて飲んで帰ります。ごめんなさい」

クマが指を突き合わせて汗をかいているスタンプが付いている。

わかってはいるようだな。土曜、夜バスに乗って奈良に行き、そこから移動して大阪に行き、そして夜行バスで早朝戻り、シャワーと朝食を済ませ、また出社ということをやったその晩に飲み会、いい度胸だ。

続けてラインが入る。

「・・・で、火曜は元いた部署の連中での飲み会に誘われてます。行きます」

クマがsorryと詫びている。

ま、いいけどさ。誘ってもらえないより、誘われていること。よかったよかった。

さてここでどう返事するか。

オッケーとスタンプで返事するのもちょっと悔しい。きっとすぐ安心してしまう。せっかく「悪いなあ」と思っているのを安易に「なあんだ怒ってないや」と安心させてしまうのが勿体無い。悪いなあと思いながら飲めば良いと意地悪をしたくなる。

では、了解です。こちら大丈夫です。気をつけて。

これは、これで、恐怖だ。サーっと冷めた怒りを連想する。

まったく。ほどほどにね。これも違う。大らかな容認につながり、奴を付け上がらせる。

結局放っておいた。ピンとくる言葉もスタンプも見つからなかった。夫の方には既読のマークが付いたはずだから伝わったことは知っているはずだからいいだろう。

「ただいま〜」

10時、どうせ飲んでくるんだから遅いだろうと、もう寝ようと歯を磨いていた時だった。なんか玄関が開いた音したけどな・・まさかねと思い念のため覗いたら立っていた。

「ごめんね〜」

伺っている。私の温度を伺っている。どうやらあまり深い意味なくスルーしたラインを彼は最高恐怖で受け取って怯えて帰ってきたらしい。

「ほんとごめん。そんでさ、読んだと思うんだけど、ぼく、明日も飲み会誘われて、ほらあの、前の古巣の奴らと」

「いいからすぐお風呂入って寝なさい、昨日今日とバスの中で碌に休憩取れてないんだから」

「そだね、すぐ入る、ごめんね、ありがとね」

 

今朝。玄関でもう一度

「ごめんね、今日も飲んでくるんで、でも、今日は楽しみの回だから。楽しんでくる」

知っている。今夜の集まりはそれぞれ散らばった入社した頃からの付き合いの仲間達が久しぶりに集まるのだ、何があっても行きたいほど懐かしい奴ら。

「あなたは楽しくなると、ええい、いってまえって羽目をはずとこあるから、気を付けなさいよ、まだ火曜だし、もうおっさんなんだからね」

「わかってる」

「もし、羽目外して帰ってきたら、当分ワイシャツ、アイロンかけないぞ、くっしゃくっしゃのまま出社したまえ」

「ヒーン。気をつける。じゃ、行ってくるね。」

夫のほっぺは今日も光っている。

あの膨らんだお腹の中身は幸せなのかもしれん。腹一杯の幸せを持っていそうな笑顔はどうにも憎めない。