うちの奥様お口が悪い
「ごちそうさま。ありがと、美味しかった。これ、吉野家で食べたら500円とるよ」
鮭と納豆、トマトとイチゴに浅蜊とキャベツの味噌汁。
「失礼な、500円なんて」
「あ、違う違う、もっとするする、700円くらい」
「じゃ、置いてけ」
「え?」
「700円、置いてけ」
「ヒェーン」
階段上がって着替えて降りてきて玄関で靴を履く。
「あ、ありがとピカピカ」
英語のCDを聞くために、耳にイヤホン突っ込んでそう言う。
「じゃ」
出勤前、ハグをするのがなんとなくの習慣になっている。愛情表現というよりはガシッと肩を抱きあい、背中を叩き気合をいれる。
外国の男同士の挨拶のようなエールの交換のようなものだ。
「はずせ」
「へ?」
「その耳に入れてるイヤホン外せ」
耳から英語教材のフレーズが溢れてる。
「だってこれ、いろいろ準備がややこしいんだもん、コードが絡まって」
「じゃ、その英語の女性とハグすればいいじゃん 」
「わかったわかったわかった」
いってらっしゃーい。
くしゃみするときは鼻に手をあてること、ご飯は左手出すんだよ。
はいはいはいはい。
いい加減なやつだ。すでに耳にイヤホン、聞き流しつつ調子よく手を振ってご出勤。