恥ずかしい
昨日の朝、NHKの「あさイチ」に、村木厚子さんが出演していた。
身に覚えのない「郵便不正事件」で逮捕され、不当な検察の取り調べと闘い無罪を勝ち取った、元厚生労働省の人だ。
164日もの勾留のあいだ、絶望せずどう過ごしていたのかを淡々と穏やかな笑顔で話している。
21日間に及ぶ取り調べが終わると、保釈申請は認められず、ただただ、刑務所のなかで過ごしたのだという。刑務所のなかで読んだ本の数々を一覧で紹介してくれた。
「なにもすることがなかったものですから。私の好みで買うことはできないので、差し入れされた本です。普段自分では選ぶことのないジャンルの本なども全部読みました」
そのなかに警視庁なんとかという、タイトルがあった。司会の博多大吉さんが、
「警察で辛い目に会っている最中によく、こういったタイトルの本、読めましたね」と訪ねるとやはり、穏やかな笑みのまま、こう応えられた。
「もともと推理物が好きなんですよ。でもさすがにこんなことがあった後には読めないかなと思ったのですが、面白く読めました」
今でも警察物は好んで読むという。
私は恥ずかしくなった。あの漫画、読もう。
あれだけの体験中に、警察シリーズを読んでみようとするなんて。そして楽しめたというのに、私はなんなんだ。
トラウマだかなんだか知らないが、登場人物の心理に自分を重ねてうじうじうじと。
いちいちこれっぽっちのことに過敏に反応する。
だいたい、作者が私をモデルに書いたわけでもあるまいし。これだけみんなが反応するということは、多かれ少なかれ誰もがこの主人公と似た一面を持っているからとも考えられるじゃないか。それを自意識過剰のナルシシズムもいいとこだ。
買って読んでみて、楽しめなければそれだけのこと。
ただ、それだけのことで、そこに意味付けなんてする必要ない。
大げさな。
恥ずかしい。
なにをそんな悲劇の主人公にでもなったかのように、酔いしれてたんだ、私は。
そういう訳で今、手元に1巻2巻とある。買ってみればどうってことない。
今日は早朝に夫が帰って来て、自分の時間はなかった。そうなると、早く読みたい。
読みたい読みたい読みたい読みたい。
夫を見送った明日の午後、このコミックを開くのが今はむしろ楽しみにすらなっている。
私のメランコリーなんて、所詮こんなもんなのだ。