元旦のBGMは昼間のカフェミュージック
夫は6日の日に大きなテストがあるそうです。
「今度のは絶対負けられない」
いろんな方面の資格を受けているので妻はいったい、夫がどこを目指しているのか、また、過去いくつ負け、いくつ勝っているのか皆目見当がつきません。
「おヌシは何になろうとしているのじゃ」
「いいからいいから。無駄にはしてないから」
もはやこの人の資格所得は趣味なのだと思われます。
おそらく定年退職しても、何かしら見つけてきてはやることでしょう。
その負けられない戦いのはずの人が元旦の楽しいテレビ番組をつけながら、本を開いて、視線と意識は画面に吸い取られておりました。
「消せば?」
「いや、この方がかえって集中するから。BGM」
「図書館に行ったと思えばテレビはないじゃん。消していいよ。消せば?消せ。消しなっさい!」
「だってぇBGM」
「だったらそれ専門のアプリがあるから入れてあげるよ」
夫は理系の大学を出ているのにテレビの配線も録画もできない不思議な男です。iPhoneもLINEとメールとYouTubeしか使えません。そしてそのLINE、メールの連絡帳には家族しか登録されておりません。理由を聞くと、もらったメールを登録するやり方がわからないと言うのです。教えようとすると「いい、使わないから。来たのに返信するから必要ない」と拒みます。彼の大学時代からの仲間は私にどうにかしろと言うのですが、一向に聞く耳を持ちません。
そんな彼がアプリでBGMが聞けるのがあるからと言ったところですんなりと納得はしません。夫の中ではアプリというのは知らず知らずのうちに高額な料金を騙し取られる危ないものだからです。
「無料のがあるから。何やってもお金かからないのがあるんだよ」
渋る彼から端末を受け取り、ダウンロードをしてやり、立ち上げ方から、操作の仕方を説明しながらお試しに昼間のカフェというチャンネルのものを流して聞かせます。
「あら。あらあらあら。いいね。これ。これ、タダなの?」
「そうだよ、いくらやってもタダだよ。どれ聞いてもタダ」
へぇ。ヘェ〜。すごい、本当にカフェみたい。
新しいおもちゃがすっかり気に入った彼はしばらく、ホテル、医療系、オフィスと各チャンネルのBGMを流してみては
「本当にホテルだ〜」
と喜んでいました。
「これならやる気出るね。ありがとう!」
新しい学習デスクを買ってもらった子供が張り切ってそこで宿題をするように、ちょっとかっこいいBGMを流しながらお勉強を再開したのでした。
「なんかさ。これ聴きながらやってると、いいな。捗るな」
私としては元旦のテレビのついたお茶の間のあの、まったりとした空気感をのんびり味わうお正月も味わい深いのだけどなぁ。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。