お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

ぴっかぴかの人

夫が帰って来ている。

息子は絶賛「ひとりでできるもん」実施中のため、夫に対してもそっけない。ついこの間まで、まとわりつく親父をめんどくさいと思いつつも、払いのけることはしなかった。それが急に愛想悪くなったものだから、久しぶりの父は当然とまどう。

一人っ子はこういうとき気の毒だ。兄弟がいれば、親の目も分散される。本人ももっと気楽に反発できたろう。

ついつい、親は悲しんではいないかとアンテナを張っているのがわかる。

私は優しいお母さんでいるよりも、ぐうたらでいよう。気を利かせた料理や行き届いた気配りはきっと今の彼を追いつめる。

勝手気ままに遊びに行き、さっさと寝て、テレビを独り占めしよう。あれを買ってこい、これを運んでくれとわがままを言おう。

心置きなく飛んで行ってほしい。罪悪感など持たずに飛んで行け。

「あいつ、なにか怒ってるの?」

いつもなら「おう、おかえり」と迎えてくれる息子が顔も見ず「ん」とだけだったとしょげている。

「放っておき。追いかけ回しちゃだめだよ」

それでも、3時過ぎてもまだ眠り続ける息子が気になってしょうがない。トイレの扉がバタンといえば「あ、起きた」。降りてこないと「また寝たのかな」「寝過ぎていいの?「そろそろ見てこようかな」ともう、おちつかない。

「よく言うわ。自分だって、新婚のころ毎週末、延々3時4時まで寝てたじゃない。奥さんほったらかしで」

「そうでしたそうでした」

 

お盆に小さめのおにぎり4つとオムレツとポテトサラダと果物。

これさえ置いておけばいいのです。そう夫に言うと

「さびしいな。語り合いたいな」

この人は、私より、ずっとずっと素直で心が広い。

あんまりのさびしさに

「トンさん、僕と結婚してくれてありがとう」

と言い出した。

 本当に屈折していない。鈍感で自己中心的で頑固なくせに、きれいなまんまのところはいつだってピッカピカ。

いつも強い光を放っている。

わたしこそ、あなたでよかった。

「はいはい」と照れてはぐらかす私の方が、ずっと助けられているのです。