お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

爺の寝床と姫の寝床

ベッド下に掃除機をかけたくて動かした。

壁によせているのをググッと真ん中にずらしたら、あら、この位置、いいかも、と思う。

先日、ベッドが壊れたので、新しいのにしたばかりなのだが、無印良品のそれは、以前のものよりフレームが一回り大きい。どうせ買い換えるならと欲張って引き出し付きのものにしたので高さも20センチほど高い。

夫の方は壊れていないのでとりあえずは自分の分だけ購入したのだが、同じシングルなのに幅も高さも私の方が大きくなってしまった。

サイズアップしたことと、引き出しがついたことで「これはもうそう簡単には動かせない」と思い込んでいたが、ダメ元でやってみたら以外と力をかけずスーッと動いたのだった。

部屋が狭いから少しでも広く使おうと、壁にぴった寄せていたが、これはこれでいい。

部屋の中央に持ってくると、左右両脇にそれぞれ1メートル弱の余白ができる。なんとなく女王のベッドのよう。

そういえば外国の寝室はベッドが部屋の中央というのをよく見る。子供部屋は壁に寄せているのもあるように思うが、夫婦の寝室や、ちょっとお洒落な一人暮らしのビジネスマンなども両脇にサイドボードがあ理、そこに本やランプや恋人の写真なんかが置かれていたりする。やんごとなき姫も王様も、天蓋付きのが中央にドカンとある。

いいわぁ。これ。外国の映画みたい。

ベッド以外の家具はオンボロの質素なものばかりなので、王族の寝室とはほど遠いが、屋根裏部屋の基地のようには見えてくる。

夫のベッドは壁にくっつけたまま、自分のものだけ部屋のど真ん中に持ってきたものだから、圧倒的にこの部屋全体が私基地になった。

二畳用ホットカーペットを半分に折りたたみ一畳サイズにして、左脇スペースの窓際に置く。二重になったのでフカフカ感が増し、これもいい具合。

それから机から椅子から本棚からと配置を整え、配線をし直し掃除機をかけ、部屋づくりに没頭した。

全てが良くなった。

ベッドには窓から暖かい日差しが真っ直ぐに当たり、窓際のカーペットはフカフカで、ここに座ってベッドに寄りかかると頭がちょうどいい具合にベッドに乗っかる。

窓前に置いた机は後ろが丁度ベッドの頭の部分の板がが間仕切りのようになり、小さな小さな書斎のよう。

「いいじゃーん」

すっかりご満悦である。

ただ、一つ、問題点が発生した。

部屋の中央にデーンと置かれた妻の大きなベッドのその側に、夫の以前のフレームサイズの低く、幅も小さなものがそっとある。

これは・・如何なものか。

まるで・・・そう、まるで、姫と爺のベッドのようだ。

・・・明日帰ってくる。きっと夜通しのバス移動に疲れ果てた彼は「ちょっと寝てくる」とここに来る。

奴はこれまでも私の突飛な模様替えを怒ったことはない。むしろ「今度はこうきたか」と笑う。おそらく今回も「トンさん、また一人でやっちゃたの!?」と言いながら笑うだろう。

だからといってここまでやるのはいかがなものか。

それも単身赴任中に。いかにも「お前の場所はこれだけ!」って感じではないか。

うーん。でもこれがいいんだ。しばらくこれでやってみたい。

やむを得ん。明日「爺、許せ」と夫にお願いしよう。