お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

お別れ

祖母が亡くなった。

 

昨日の朝、施設の集中治療室に入ったと母のところに叔父から連絡が入った。

「ちょうどお姉さんが休みでいるから二人で行ってくるから、あなたはいいわ。今日すぐどうこうってことないと思うから。家にいなさい」

うっすら覚悟は決めていたから動揺していないつもりだったが、本を読む気にもなれず、ぼんやり過ごした。

昼過ぎ、姉が電話をしてきた。

「落ち着いているから私は帰るわ。お母さんはもう少し残るって。悪いけどわたしが帰るまで家にいてくれる?」

2時半に帰宅した姉を待ち、買い物にでた。

寒いな、今夜はおでんにしよう。

こんなときにもこんなこと、考えるんだよな。人って。

父のときとは違う、もっと穏やかな気持ちだ。それでも心の中心で

「がんばって、がんばってくれ」

と念じたりする。そしてふと思う。

あぁ、もしかしたら引き止めるような念を送ったらいけないのかもしれない。もう十分頑張ったんだ。やっとおじいちゃん、ひいおばあちゃん、兄弟の懐かしいもとに行けるんだ。あっちに行きたいのかもしれない。

ユニクロで黒いブラウスとカーディガン、ウールの黒いコートを買った。

準備をしているようで迷ったが、間に合わせにダウンの焦げ茶のコートや黒いタートルネックではなく、ちゃんとした喪の礼服で送りたかった。

おでんをつくり、二階にあがり、本を開く。

電話が鳴った。切れた。今度は携帯が鳴る。まさか。

母だった。

「いま、亡くなったの。」

「そう。お母さん、大丈夫?」

『私は平気。大丈夫、一応連絡したけど、今日すぐなにかするってことないから。心配しないで。旦那さんにはわざわざ帰ってくることないから、言わなくていいから」

「わかった。こっちは大丈夫だから。なにか、なんでもいいからつまむんだよ」

慌ただしく切れた。

そのときがきたのだ。いま、この瞬間、生きていないのか。

実感がない。

夫の声が聞きたくなった。帰ってこなくていい。ただ、言いたくなった。時計を見ると4時47分。ちょうど終業を2分過ぎている。

「もしもし、いま、少しいい?おばあちゃん。死んじゃったよ」

シンジャッタヨ。自分の声を自分で聞いたら急に涙腺がツンとした。

泣かなかった。泣きそうになっただけだった。

夫は、できれば行きたいから葬儀のめどがついたら、早めに連絡をするようにと言った。大丈夫とも、元気出せとも言わなかったが、やっと現実味が湧いた。

もう、笑ってくれないんだなぁ。

本当に、本当におつかれさまでした。

本当に本当に、たくさんたくさん、ありがとう。

大好きです。ずっと大好きです。