りぼんの朝
息子バイトの朝。今日も私は一緒に起きない。昨夜、残りのグラタンとトマトを冷蔵庫にセットして「あとは自己責任で。出かけるときは声かけて」と眠りについた。
「母さん、行ってくるから、ここで、いいから」
バイトの朝が一番きびきびとしている。
「いってらっしゃい、じゃ、お言葉に甘えて、ここで。気をつけて」
そしてまた眠った。
目が覚めたのは7時半だった。
なんという贅沢な朝だろう。すべて自分のペースで始まる。なにもすぐに、朝食にしなくったっていいんだ。
ぼんやりした頭のまま、トイレと風呂を掃除し、洗濯をして流れで掃除機をかけた。思考が働きだす前になにも考えず無心でやる。
この起きぬけのぼんやりが薄れないうちが私にとってのゴールデンタイム。
訳のわからないうちに、自分で自分をごまかしてやってしまう。
茄子とピーマンの甘味噌煮をレンジで作る。
ついでに大根も意味なくゆでておく。なにかに使えるだろう。
カボチャもレンジで甘辛く煮た。あとなにか・・・少しずつ頭が覚めてきた。
ここまでにしとこ。
9時15分。
パンとスライスしたきゅうりとハム、トマト、ちょっとのカッテージチーズを自分専用の朝の皿に盛り、蜜柑、マヨネーズ、マーマレード、コーヒーと一緒に、無印のお盆にのせる。
きゅうりの青臭い匂い、ハム独特のちょっと安っぽい加工品の匂い、とぽとぽとぽ・・・・お湯をマグカップに注ぐ音、そしてあがってくるコーヒーの香り。
私の朝。
いそいそと運び、どかっとテレビの前の文机に陣取る。
さてさて。
レコーダーが直ったので朝ドラにあわせなくてよくなった。録画しておいた朝ドラを再生し、観ながら食べる。
まずコーヒー。そして、一枚はハムきゅうりマヨネーズ、もう一枚はマーマレードとカッテージ。
最後にお楽しみで、卵ぼうろ。
ドラマが終わって、今度は録画「あさいち」を観る。オープニングのおしゃべりを数分みて、テレビを消した。
ごろん。静かだ。
気がついたら10時半。ここでやっと、着替えた。
携帯に通知がついている。夫からのラインだった。
「結婚記念日おめでとう。25周年。これからもよろしくお願いします」
えっ?あ・・・そう・・か・・あれ・・そうだっけ?・・そうだ、そうだ、今日だった!
ラインは7時。出勤前だったのだろうか。そのころ私は呑気に二度寝の真っ最中。ごめん。
「ごめん。二度寝してました。今、読んだ。記念日おめでとうございます。ここまでありがとう。こちらこそこれからもよろしくお願いします。」
私の朝に、今日はりぼんがかかった。