土曜の雨の午後
雨が降っている。
机の位置をあちこち動かして結局、また窓の前に戻ってきた。
仕事や勉強に集中するため場所ではない。
ただ座って、ぼうっとするところ。
無印良品の7000円の折りたたみのこの机。この机を買ったときは、まだまだ母が怖く、夫の単身赴任の荷造りと息子の大学入学のためにスーツを作ったりと、心、ここにあらずだった。
自分の場所が欲しくて、エイっと買った。ここで本を読もう。手紙を書こう。写真の整理をしよう。家事の合間にほっとここでくつろぐ自分をうっとり想像した。
やらなくてはいけないこと。やるべきと決めたこと。怠惰な欲望に流されずに日々、納得いく主婦らしい暮らしをしたかった。そんな自分に憧れていた。
きっかけはなんだったんだろう。
ある日突然、もう、修行はいい、と思った。充分悩んで苦しんだ。試行錯誤した。努力もした。
無駄じゃなかった。
自分にとっての、自分だけの真実がやっと出来上がってきたのか、あるとき、もう、許してあげよう、よく頑張った、と不遜にも思ったのだった。
なにも成し遂げたわけでもないのに、不思議だが、突然だった。
そうした途端、ほうら、案の定。怠惰な私が「え、いいのぉ?そういうことになったのぉ?」とホクホク嬉しそうに顔をだす。
写真の整理は別にいいや、今じゃなくても。パソコンがうまいことやってくれてる。
机に向かって読書って、本はだらっと寝っ転がって読むのがいい。
雑誌に載るような素敵な奥さんは、私にはムーリ。
ぼけっと窓の外を眺めるだけで何もしない。
それがとても心地よい。
誰が悪い誰のせい。
自分のどこがいけない、何が足りない。
もっと優しく
もっと明るく
もっと充実
もっと向上
そのもっとのゴールもスタートもよくわからないまま、私のお一人様レースは幕を閉じた。
雨が降ったら降ったなりに。
晴れたら晴れたなりの。曇りの日は、どんよりと。
気が付いたのは私のリズムは相当遅いこと。
そうとう、遅い。
理解も、成長も、行動も。
それがわかって、そういう生き物なんだと納得するのも時間がかかった。
自由なんだなぁ。誰も彼も。
多様性と格差。似てるようで違うんだ。
差って何よ。どこに標準合わせて何とその差を埋めようとしてんのよ。
雨が降っている。
無印の机に向かって、ただ、雨の線をじっと見る。
テレビもラジオも決して、雨が屋根やトタンや、ベランダにあたる音が聞こえてくる。
いつまで見てても飽きない。
雨の音のリズム、好きだ。