5分
朝、6時半、夫からラインが入った。
「おはよう。暑いな。大丈夫か。今日も頑張ろう」。
確か、ワールドカップで日本が勝ったとき、「勝ったね。よかったね。ではおやすみ」とやりとりして以来か。違う、豪雨の時にそっちは大丈夫かと聞いたとき以来か。
何時まで会社にいて、何時まで起きているのか、よくわからないので、こっちからは連絡をしない。
夫も夫で、帰るバスの中は、暇なもんだから「今、浜松」「富士山が見えた」と、面倒臭いほど打ち込んでくるくせに、一旦向こうに戻ると、お給料を振り込んだときと、気が向いたときくらいしか連絡をしてこない。
今朝は気が向いたのだ。
ラインの無料通話をしてみた。
「おお、おはよう。どうだ、暑いでしょう、そっち変わりない?」
「おはよう。変わりないよ。そっちの方こそ暑いでしょ、テレビでやってた」
「暑いねえ」
「こっちも大変だよ。昨日は35度の中、お母さん連れておばあちゃんのところ行って、まっすぐ帰りたがらないもんだから二子玉寄ってお茶して・・・」
「あ、あ、そう」
この辺は聞いていない。変わりのないことがわかれば、あとはどうでもいい。
「あと、一昨日は息子、また熱中症になって帰ってきて、手が痙攣して動かせなくなって・・」
「何、息子、熱中症、なったの?それで?」
息子ラブの夫、ここは喰らい付く。
「もうさ、自己管理なってないから。帰ってくるなり、倒れてさ。仕方ないから、スプーンに練り梅乗せて、無理やりなめさせて、コップを私が持って強引に何杯か水飲ませて、落ち着いてきたからリビングの涼しいとこに寝かせてからOS1買いに走ってさ。私も外出して戻ったばかりでヘロヘロだっていうのに、もう。それで、ゼリー状の補水液飲ませたら、しばらくうとうとして、目が覚めたらケロッと夕飯にカレー食べてたよ。まったく・・」
「あ、そ。気をつけてな。トンさんも。暑いから」
「まったく・・・」の後からが、私の愚痴りたい話の山なのだが、夫は息子が回復したと聞けば、もう、用はない。話は終わる。
「ま、こっちはなんとかやってるから。そっちもちゃんとまともな食事、とってよ」
「大丈夫、大丈夫、じゃ」
「はい、じゃ。では。いってらっしゃい」
「はいはい、では、よろしく」
5分もない。
ぎゅうっとお互い相手の様子を探って、問題なしと確認できたら「では」と切る。
そばにいても話さない。
遠くにいても話さない。
存在確認をするだけ。
でも、後からじわじわと効いてくる。
5分のサプリ。