新テレビ
テレビが届いた。
画面中央に青い線が出はじめたのが5月8日。夫から「買ってよし」のゴーサインはすぐ出たものの、なんとなく、億劫でそのまま観ていた。
青い線はジワリジワリと濃くなっていき、ついに息子からせっつかれた。
「もう、すっかり慣れちゃって、このままでもいいような気がしてきた」
「いやいやいやいや、それはさすがにヤバイだろう」
そんな冗談ともつかぬやり取りをしつつ、やはり、5万円を超える買い物は、腰が弾ける。自分のものなら、えいっと決めてしまうが、家族共用の、それもしばらくは使い続ける家電である。ネットで商品情報を調べてもチンプンカンプンだ。
息子は4K4Kとうるさいが、そうそう乗せられて上等なものは買うまいと、あれこれ見比べたが、どうも、今はそれが基準らしい。
だいたいの目星はつき、夫も了解しているのに、アクションを起こすのを延ばし延ばしにしてきた。
もう7月である。
ボーナスの残っているうちに買わないと。
たまたま昨日は夫が家にいたので、その横でパソコンを開き、ネットで注文した。
「するよ。注文しちゃうよ。これ、頼むからね」
「はいはい。」
よく商品を見もしないで頷く夫。が、この場に立ち会い、いいと言ったのだ。
ぽち。
押した。
初めて、家電をネットで買った。なんとあっけない。なんと簡単。なんて便利。
それが、もう、今日、届いたのだった。
大きな箱に入れられて届いたものは、はたして本当に私の注文した通りのものなのか。
これですよ、と言われたら、メーカーさえ同じなら、どれでもそうだと思ってしまうくらい、あやふやだ。
あっという間に届き、あっという間に設置され、あっという間に使っていたテレビは撤去された。大きさも色も以前のものとほとんど同じ。
「これ、家族に黙っていたらわからないかもしれないですね」
そう言うと即座に返された。
「いや、すぐ、わかりますよ。逆に」
そりゃそうか。青い線が消えただけでもえらい違いだ。
今度のテレビにはいろんなアプリがついている。私の愛するアマゾンプライムも。
だが、意地悪な私はこのテレビではログインしない。
テレビをつけっぱなしで眠ってしまい、一夜をリビングで明かすトドが我が家に住み着いているからだ。
「俺、二十歳になったらアマゾンプライム、契約するんだ」
そうしなさい。そうしなさい。