お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

やられた話 1

昨日は母にすっかりやられてしまった。

3時過ぎに買い物と夫に頼まれた用事をすませるために、隣町の三軒茶屋まで歩いて向かっていた。そこに携帯が鳴る。画面を観ると母の名前。いやぁな予感がする。

「はい、どした」

「あ、あたくし。今、トオルおじさんの車でホノカさんも一緒にそっちに行くから。お父さんのオーディオ、診てって頼んだのよ、すぐに着くから、あなたもいてね」

説明すると、トオルおじさんというのは母の弟。ホノカさんはその妻。今日、母は祖母の施設に出かけていった。101歳の祖母の足がむくみ、いよいよ車椅子になってきたので、施設の方と、お医者様、そして親族が、これからの方針、つまり、積極的治療をするのかしないのか、最期の時はどう迎えるのか、などを話し合うため集まったのである。

どうやら、母は、そこで弟であるトオルおじさんに、亡き父のオーディオが音が出なくなっているから診て欲しいと頼んだようなのだ。そう言われた叔父は、それならこれから診にいってやるよと、車に母も乗せ、今まさに実家に向かっている、という状況らしい。

「あなた、家にいてよ。私、機械のことはよくわからないから」

「私、今、出先なのよ、あとどれくらいで着くの」

母は電話越しに叔父にあとどれくらいかと聞いている。

「あと30分もかかんないって、居てよ!」

「銀行だから。急ぐけど、到着したときには少し遅れるかも」

「えーっつ」

・・・子供か。いきなり言われても、無理なものは無理なのじゃ。それに、今朝、あれほど私は午後は留守にするけれど大丈夫かと確認したじゃないか。「どうぞ、お構いなく、ご自由に」と言ったのはどこのどいつじゃ。

「なるべく急いで帰るから。」

「早くね」

仕方ないので買い物はまたにして、銀行だけを済ませ、急いで戻る。

庭にはすでに叔父の車が停まっていた。