朝の準備
朝、息子がドタバタドタバタ支度をしていた。
課題制作の小道具がイメージ通りに作れていないらしい。さては、今朝の今やったな。昨日はアルバイトから帰って来てからはずっとスマートフォンを見て楽しそうに笑っていた。
「あぁ、もううまくいかないから、これ無しでやろうかなっ」
凝り性なんだから、昨日の夜やっていれば、きっと満足いくものできただろうに。昨日やっとけば・・・。
でも言わない。
夫がよく
「明日、お偉いさん集めて会議なのに、まだ資料、一枚もできてない」
と深夜にヘラヘラ笑いながら言っていた。
「大変じゃんっ大丈夫なのっ」
「大丈夫。明日始発でいくよ。なんとかするさ」
当時、会社の合併があり、連日2時3時の帰宅だったが、どうしたらその、おおらかさがこの状況で出せるのか、聞いているこっちの方が胃が痛くなるというのに、弱ったなぁと言いながら、いつもと変わらない態度が不思議だった。
なんでも準備万端で臨めない社会に出ていくのだ。
ドタバタを繰り返すうちに、これはヤバイとか、ここは手を抜いていいとか、ダメだとか、そんなものも掴み取っていくってこともあるかもしれない。
きちんとできていないと不安だから、とことん抜かりなく準備するのも才能であり、
「なんとかするさ」と笑うのも才能。
「心配で気持ち悪くなってきた」
固い表情をして出かけていく息子はどっちになっていくんだろう。