お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

落ち着こう

今朝、息子を五時半に送りだした後、寝ぼけた頭でぼんやりテレビをみていると、映画監督が今日公開の映画の制作にあたっての話をしていた。

どんな映画なのかもわからず、聞いていた。グローバリゼーション、ローカライゼーション、文化の存在意義、国を超えて、多様な価値観、硬い言葉がたくさん出てくる。

「食べ物に対する文化は、特に、自分の価値を超えて受け入れられないからと行って、安易に否定してはならない」

それは宗教を否定するのと同じくらい危険なことだと。それだけデリケートな問題だから、この問題についても政治は深く介入しようとしない。

なんだろう。捕鯨の話だった。「おくじら様」という映画は捕鯨が生業だった村にある日突然沸き起こった、捕鯨を残酷だという世界各国からの批判による騒動を追った8年間に及ぶドキュメンタリーだということがわかった。

このモヤモヤは私の中にもあった。小学校の頃、鯨の竜田揚げを給食で食べた世代だ。鯨は体にいいと言われた。好物でもあった。命のあるものを食べて、命を繋いでいく連鎖の中に、この生き物はよくて、こっちはかわいそうという矛盾はいつもある。息子が幼い頃、このことを突きつけられたら、どう、説明したらいいだろうと、いつも思っていた。彼が、このことに関して疑問を抱かないのをホッとしながらも、なんとも思わないんだなぁと、不思議だった。

悲しく、悲惨な話としてではなく、どちらが悪いという話にもしていない、コメディタッチも交えた作品に仕上がっているということなので、観てみたくなった。どっちが正しいということではないのだ。文化なのだから。どうとも解決できないのだろうか。

副題に「二つの正義」とある。正義ってなんだ。正解ってなんだ。

パソコンで上映している映画館をみた。11時45分。席は思ったより埋まっている。慌てて、私も席を確保しようと、購入ボタンを押して、先に進んだ。

今から支度すれば間に合うし、終わってすぐ帰れば午後は家で何事もなかったかのようにのんびりすることもできる。できる。やってみよう。

席を決め、クレジットカードの番号を入れるところに来て指が止まる。

・・・・待て。

なんか、ハイになってないか。私。

ここのところ、いつもやらないことをちょっと試してみては、できたって自分の自由と可能性の広がりを確かめ、すっかりなんでもできるんだハイになっている気がしなくもない。

今も、本当に、この映画がみたいのか。それとも、息子がバイトに行っている間に、ちょっと地味な映画を見つけて、パッと行ってパッと帰ってくるってことができるっていうことを試してみたくなっているのか。妙な高揚感でワクワクしているあたりが怪しい。

まるで中二の子供が「渋谷だって一人でいけるぜ、俺」と粋がっているのと同じじゃないか。

やめた。

ちょっとタムラグを置こう。

落ち着け、私。

慌てるな。慌てるな。はしゃぐな、はしゃぐな。

結局、それから二度寝した。