たのんだよ
来週の連休明けから夫が10日間の出張にでることになった。
千葉の皆さんのお手伝いをする。
「しばらく家を開けるけど頑張ってな。すぐ帰ってくるから」
ドラマチックに言われるがつい最近まで単身赴任の留守を守っていたのであんまり動揺しない。
それよりも被災なさった一方々のどなたかひとりでも、彼が癒せたらと自分の想いを託してしまう。
「なにか買って用意しておくものある?」
「うん、ぶっちゃけ・・」
なんだ。
「パンツ10枚と白Tシャツ10枚と黒い靴下10枚」
・・・。
「洗濯洗剤と物干ロープだって?」
「ムリムリムリムリ」
ビジネスホテルにはコインランドリーもあるそうだが、鼻から洗濯する気がない。
でも買った。
助けにいく彼が向こうで少しでも快適に過ごせれば現場でもいい仕事ができると思う。
いい仕事っていうのは数字だけでなく心に少しでも寄り添う愛のある判断と機転。
直接彼が被災された方達と接するかと思うと、あれこれ持っていってもらいたいが、そういった役割ではないのでそれは無理。
募金をして祈るしかできない申し訳なさを、この男の快適さを整える事に託したい。
夫、愛ある仕事を!
贅沢に日が暮れる
息子が急に友達とディズニーランドにいくことになり、夫はゴルフの練習でそれぞれ夜の10時過ぎまで帰ってこない。
あら、ってことは今日はまるまるお一人デーってこと?
映画を見に行こうか家に篭って一日中のんびりしようか、ワクワクしながら朝食を食べたが結局は、芝刈りをし、タンスの整理をし、疲れたから昼寝して、で、今さっき買い物がてら散歩して帰ってきた。
思っていたほどお一人様を充実させなかった。
それでも家族の動向に追われず、好きなように好きなとき思いつきでアレコレやって日が暮れた。
今日は一回も急ぐことはなかった。
なんて贅沢。
禊
いつまでそこにこだわっているんだと言われそうで書くのをやめようと思っていたが自分自身のふんぎりのために書く事にした。
母とのやり取りである。
ああ、また、それね。いつまでもそこから抜け出さない己を晒す恥ずかしさもあるが、書いて昇華したい。おゆるしください。
ちょっといい、午前中やってきた。
「お姉さんね、かわいそうにっていったらなんだけど、やっぱりそうとうがっかりしてるみたいよ。ハワイのことあなたのためにいろいろ調べていたから。」
わかっているよ。もうその話、許してくれと思いつつ突っぱねられない。
「本当にね。申し訳ない」
姉は私が「行こうかな」と言ったときそれはそれは張り切った。その想いを踏みにじったことが今回のキャンセルで一番胸が痛む。
離婚後ずっと独身の姉は私をつれて歩きたがる。
会社の休日に美術館やイベントに誘われるたび、しんどくても喜ばせたくて「行きたい」ふりをして連れて行ってもらうふりを装いついていっていたが、身体を壊してからはやんわりと逃げるようになっていた。
そもそも「つきあってやる」という姿勢が間違いなのだが、当時、自分に意義を見いだせないものだから「私はお姉さんを喜ばせることができる」とそこに存在価値を感じて得意になっていたのだと思う。
家族を喜ばせたいと勝手にあれこれやってた小さな頑張りと嘘に疲れ果て、これからは自分ファーストだわと変更し始めたとき、「以前の妹」の私とずれが生じて彼女を悲しませる。
わたし、これから自由が丘に行くけど・・?と言われればすべてを察して「あ、行こうかな私も」とヒョコヒョコついてきていた妹があるときから「ふーん、いいね、行っておいで」と言うようになったときのあの、何とも言えない姉の顔が忘れられない。寂しそうなつまらなそうな。
ああっっ。
それでもやっとそれを定着させたところでのこのハワイドタキャンは姉に対しての裏切りになってしまった。今回の事でそこが一番辛い。
「昨日、メモがあったから覗いたら向こうで日本語の通じる病院とか、あの人、そこまで調べてあったのよ、本当に楽しみにしていたんだなあって思って」
駄目だった。
声をあげて泣いてしまった。
「えーんえーん」と自分でもびっくりするほど馬鹿らしく間の抜けた鳴き方で拳固で出てくる涙をぬぐう。
「お姉さんには本当に申し訳ないとおもってる」
泣けば泣くほど涙がでてきてしまう。あれ、おかしい、そんな大げさなつもりじゃないんだけどなんでか止まらない。
すると母がそれを見て急にやさしくなる。
「ごめんね、あなたを泣かそうと思っていってる訳じゃないのよ、ただお姉さんが本当にがっかりしているって知っておいてほしいなって思って、ごめんね」
そういわれてしまうと、これまでお腹の中でいちいち教えにくる母にうんざりしていたくせに
「いいの、私が悪いんだから」
と言ってしまう。あ、また小さな嘘・・と思いながら言ってしまう。
けっこう泣いた。
感情が涙になりにくい私にしては珍しくしっかり泣いた。
思いがけず泣いたら気持ちの整理がついた。
あ、もうこれ終わり、そう思えた。
母も私が泣いたら納得できたようだ。
これで、この件はもうおしまい。