お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

納得しようがしまいが

きのう、朝食前に選挙にいった。

頭がぼんやりふわふわしている。やたらハイテンションで夫のくだらない冗談にもおおげさにゲラゲラ笑う。帰宅後すぐに台所に立ち、景気よく冷蔵庫に残っていた上等のロース肉を全部入れた白菜と豚肉のうどんをつくる。

おっかしいな。なんか地に足がついていない。

肉がてんこ盛りになった丼に夫は感激しありがとねありがとねというが自分は頭が朦朧としているのでうっとうしい。

「いいからお食べよ」

思えばこのあたりからおかしかった。

朝食を食べてもなにか食べたい。

ナッツ、おせんべ、クリームパン、なにを食べても胃が違和感を感じる。

牛乳が一番ピンとくるようだった。一リットル飲み切った。

それでも満足いかずひっきりなしに何かを食べ続ける。

あつい。

とにかく熱い。身体があついのだ。

エアコンを普段は27度ドライにしている。それで充分すずしく、ひとりだとそれでも肌寒いときもある。

それを26度にしても25にしてもまったく涼しくない。

そうだ冷房にしてないからだと今度は冷房に切り替えたが26まで下げてもまったく効かない。

「これ、10年前だからもう駄目なのかしらねえ。もう一度下げて」

そう息子に頼むと

「これ以上下げんの?」

驚かれた。

「母さん、自分がおかしいんじゃないの?』

そういわれて熱を測ると37度8分あるではないか。

なるほど。自分自身が放電していたのだ。

なんだ、わたし、熱があったのね。

「熱出てたよ」おかしいやらびっくりやらで夫に言った。

「何度?」

37度8分だと教えるとトンさーん大変じゃないのと一瞬慌てる。

だからといって急遽布団にはいるでもなく、納得するだけ。

そうかそうか。どうりで。なにをやっても熱いのも、やたらなにか食べたくなって口に放り込むのも、やる気がないのも、夫のくだらない冗談にも調子あわせて大笑いするのも全部熱のせいか。

納得したところでなにも事態は変わらない。

息子は二階。夫はまた本に目を落としている。

私もどうしようたってどうしようもない。

病人なんだからなにか特別なことしたくなり、冷凍庫からアイスノンを取り出し首の後ろにあてた。

冷たい。これを求めていたのか、身体は。どうして自分の身体なのにわからなかいのだろう。不思議だ。

熱でちゃったんだもんねと開き直って一日中お菓子やらアイスやらパンやら食べ続け、あとはひたすらなにもせずぐうたら過ごした。

今朝、熱は下がり、体重は1.8キロ増えていた。

熱が下がった事も体重が増えた事も家族の誰も知ったこっちゃないのだけれど本人は「よし、終わったな。一件落着としよう」と納得し通常に戻るのみ。

 

当たり前の中の

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ポキっと折れてしまった枝先を土に挿して生き延びてくれたミニトマト

ひとつ、立派な実をつけてくれました。

誰もみてなくても。そんなのおかまいなし。

ただ、生きるのみ。

健気だなぁ。

 

数年前、排泄も自分でできずオムツをしていて、それが寝返りができるようになって

車椅子に移ってトイレにいけた日、嬉しかった。

立てるようになったとき

歩行器を使えるようになったとき

先生の手を握りしめて階段の練習

一段が三段、今日は降りてみよう

退院間際の物干しのリハビリが力がもたなくて全部できなかった

 

今日、朝食をつくり、掃除をし、洗濯をし、ハンバーグとミネストローネを作って買い物に行った

本当にそれだけの一日

だけど私にとっては奇跡

夫が早く帰ってきて

「トンさんと結婚できてよかった。結婚してくれてありがとう。トンさんがいなかったらのたれ死んでる」

と何度も言う。

もし本当にそうだとしたら

たった一人の人でも幸せにすることができたのなら

私の人生はなんて恵まれているんだろう

照れもせずそんなことを嬉しそうに言ってくれる人に出会えた

当たり前が当たり前じゃないんだ

私も照れずに奢らずいじけず素直に力一杯生きよう

職人リターン

 

一昨日、高圧水流マシーンで庭を綺麗にしてくれた彼女が「やり残しが気になる」と、午前中やってきた。

「私は気にならないって」

「いや、昨日帰るとき続きはまたって言ったでしょ。あるのよやり残し」

「やめようよ〜」

「いいや、やる」

・・・・。

関東地方にお住いの方は覚えていらっしゃるだろうか。今週の火曜日の天候を。

そうです。

深夜から明け方にかけて叩きつけるような雨が降り、夜が明けても降ったり止んだりの、それこそ梅雨前線もやり残しを一気に解消しているかのような朝だった。

遠足でいうなら中止。

運動会であっても中止。

しかし彼女は言う。

「もってこいの高圧水流日和だよ♪」

雨で緩んだ汚れが落ちやすくて作業が捗るのだそうだ。

「とんちゃんは家の中にいて見てればいいから」

そうは言うが。

「明日は?」

「明日は私実家に行くから」

「じゃ、明後日でもいいじゃん」

「明後日は午前中は仕事で午後は娘の学校の野球の応援」

高圧水流日和な上に、今日が都合がいいと押され、私は阻止を諦めた。

10時から2時間、その間、友達と食事に行くと言う母がハイヒールでそこを通る。

「申し訳ありませんねぇ、この人がだらしないもんですから」

しばらくして今度は出社する姉も通る。

「あ、どうもすみません」

ヘコヘコ頭を下げて通過する二人を

「お構いなく、あとちょっとですんで。あ、そこ、ちょっとまだぬかるんでるんで、避けてこっち通ってください」

と堂々と対応するその姿はもはや職人。

「お母様、ここ、どうします?塀にも苔があるんですけど」

ヒョエー。これからまだ塀までやるというのか。

「うーん、どうかしら、そこはそのままでいいんじゃないかしらぁ」

「すぐ落ちますよ」

「うーん、どうかしらねぇ。今日のところは、いいわ。あんまりやってお疲れになってもいけないし。ありがとうございますねぇ。ごめんなさいねぇ」

そうですか、言ってくださったらいつでもすぐ来ますよと流石に引き下がる。

そのやりとりをエヘラエヘラと薄笑いしながら側で見ていた私を母が指差し

「本当にこの人がどうにもダメなもんでねぇ、ごめんなさいねぇご迷惑おかけして」

などと言い出すと

「いえいえいえいえいえ」

と彼女も否定しない。

二人はそこで同意し母は出かけていった。

雨は上がり、マシンの音も止んだ。

小鳥はさえずり、緑は美しく、庭のアプローチも見違えるように美しい。

「ありがとうごぜいます。ささ、お入りください、お茶をご用意してございます」

「あ、ありがと、じゃ、ちょっとお邪魔するわ」

シャワーを強くなんども勧めたが頑なに断り、せめて洗面所でというのも「汚れるから」と玄関でパンツいっちょになって着替えるのも職人。

この人は愛すべき人だ。

この人が家出してきたら絶対泊めてあげよう。