午後のお茶
ご婦人二人がおしゃべりをしている。
すぐとなり。
キャベツをまるごと一個お鍋にいれてコトコト煮ておいて、毎日食べては鍋ごと冷蔵庫にいれるらしい。
「その日によってケチャップかけたり、チーズかけて焼いたり。おいしいよ。おでんみたいに、からし醤油でたべてもいいし。そこで野菜をとるからあとは楽なの。魚か肉を焼いて、汁物つくればいいのよ。なんならキャベツのスープをのんでもいいのよ」
なるほど。
うちのお嫁さんなんか、どういうわけか毎日買い物にいくのよ。あれ、どういうんだろ。
ふっけいざいよねぇ。
ホントよ。生協さんも頼んでるのにさ。毎週大きな箱がドーンと届くの。それであとなに買うっていうんだろ。
今の若い人はあれなんじゃない?ちょっと見栄えのする、ほら、写真とか撮って公表するの、あれやるから。ちょっと珍しい野菜とか買うんじゃないの?
見栄えのいい惣菜とか買ってんのかしら。
やだ。そうかしら。毎日よ。
だって、ほら、ああいうのって毎日全部のご飯、見せてんのよ。・・・あなた黙ってなさいよ。嫌われるから。
そうよぉ。わたし、大人しくなんにも口出ししないわよ。我慢ばっかりしてるのよ。
歳とって若い人に気を使って嫌になるわよね。私たちの世代、なんだんだろ。
ホントよね。姑と旦那の面倒見て、老後は大人しくだれにも気にかけてもらえない。
「あぁあ。今晩なんにしよ。キャベツもきのう終わったし。いま新玉ねぎがでてきたのよね」
「ああ、おいしいよねぇ、甘くてねぇ」
「新玉ねぎねぇ・・・どうやって食べよ」
このまえテレビで半分に切って、上に挽肉タネを乗せて、もう半分で蓋をしてふんわりラップしてレンジ600ワットで7分 っていうのやってたよ。おいしそうだった。
・・・って言いたい衝動にかられた。
よくよく考えれば、そんなことはとっくの昔に知っているし、玉ねぎの料理のしかたなんか深刻な問題でもないのだ。キャベツも。嫁も。
さよならって別れて家に帰ればそれなりに「ふふふ」と笑って暮らしているのだな。
そうやってみんな暮らしているのだな。
母の心を聞いた気がした。