お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

一郎くん

5年生の夏休み。

夕ご飯を食べていると一郎くんがやってきた。

「とんちゃん、星の観察いくよ」

学校の宿題で一時間ごとに夜空を見上げて、星座がどう動いたかを観察して、ノートに書くというのをやるためだ。

一郎くんはこの新興住宅地の団地に越してきた時からの幼馴染。うちのお姉さんと一郎君ちのお姉さんが同じ学年で、一郎君ちには下にもう一人、妹がいる。

年齢が近い子供を持った母親通しが気があって、付き合い始めたのだろう。一緒にお祭りに行ったり、親がいない時は相手の家で夕飯食べたり、半分親戚みたいな家族なのだ。そこの上から二番目が一郎君。私と同じ学年。

「ちょっと待って」

というのを待たず、ずかずかと食卓にやってきて、食べてるご飯を見て、

「いいな。とんちゃんち、ご飯の時、ジョア飲むの?」

「今日はおばさんが出かけたから、特別なのよ、いつもは飲まないわよ

、そうだ、一郎君も、飲む?」

お母さんは一郎君のお母さんが、子供にスナック菓子や甘い飲み物を与えないのを知っているので、自分が甘やかしていると思われるのを恐れて、今日は特別なんだと何度も何度も言った。

「お母さんにとんちゃんの家で夕飯の時にジョア飲んでたって言わないでね」

ジョアをぐびぐび飲みながら「うん」と返事はしているけど、多分、言うだろう。

「ほら、早く行きなさい」

お母さんに急かされて、急いで食べてとんちゃんは支度する。支度しながらちょっとウキウキしてる。一郎君と二人で外を歩くってなんか特別。

なんか照れくさい。