ただの毎日の中で。専業主婦の平和すぎる日常

自分の思っていること、ちょっと引っかかったこと。誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

トースト

冬のキーンと寒い日。四時間目のことだった。

二年生のクラスで国語の時間、いきなり先生が「外、散歩しよう」と言った。

私たちは学校から外に出て歩くっていうのが、特別な感じがして、きゃあきゃあ声をあげて喜んだ。

背の小さい子から順に、男女二列に並んで、手をつないで歩く。先生が先頭を歩いていくのについていくので行き先も、どれくらいの距離かもわからない。

でも、そんなことはどうでもよくて、いつも見慣れている街の中をいつもは学校にいる時間に見て歩くのは面白かった。

手がきんきんして切れそうに痛い。息が白い。

ぐるっと回って教室に戻ると、もう給食のワゴンが廊下に届いていた。

「パン、焼こうか」

教室の前にあるストーブに先生が自分の食パンをのっけた。

今日の先生、どうしちゃったの。特別大サービスだ。

またもやみんな、大興奮。僕もやる。私も。

「自分でやると火傷するから、やって欲しい人は先生のところに持っておいで」

おばちゃん先生のところにずらっと生徒が並ぶ。

教室中に焼けたパンのいい匂い。

いつもよりマーガリンがとろけて溶けていく。

「隣のクラスのお友達には内緒よ」

「はーい」

「でも、これだけいい匂いさせちゃったら、もう、わかっちゃうね」

あの日、先生はなぜ急にこんなプレゼントをしてくれたのだろう。

どんなに頼んでも、この日きりだった。

後から怒られたのだろうか。

魚焼きグリルでパンを焼くといつも思い出す。

二年三組の冬。