ただの毎日の中で。専業主婦の平和すぎる日常

自分の思っていること、ちょっと引っかかったこと。誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

一年生のバレンタインの後悔

「昨日チョコレートもらった人〜、手をあげて〜」

次の日、担任の女の先生が教壇に立って、自分が手を手を挙げながら言った。

小学一年生にとってバレンタインデーなんて、お遊びみたいなものだから構わないだろうという大人の発想なんだろうが、なんでこの先生、こんなにデリカシーがないんだ。

とんちゃんは本気で先生に腹が立った。

教室のみんなは誰かいるかとキョロキョロしながらクラスを見渡している。

ここは知らんふりをしよう。隣の席に座っているトモ君の顔が見られない。私が手を上げないで、しらばっくれていることをなんと思うだろう。傷つけちゃったかな。でもこの状況で手を挙げればこの先生は、もっとデリカシーなくズケズケと聞いてくるもん。絶対にヤダ。

とんちゃんは、私は何にも関係ありませんというような顔でじっと前を向いていた。

早く、この話題、終われ。早く出席とってくれ。

するとその時。

「はい」

なんと隣に座っていたトモ君が手を挙げたのだ。

クラス中、きゃあきゃあ大騒ぎになった。

「トモ君。もらったの。誰にもらったの?」

最悪の展開。もう!この先生ったら。

「とんちゃんです。昨日、学校が終わってからもらいました」

え〜!え〜!ヒュ〜ヒュ〜!

女子も男子も一斉に私を見る。

とんちゃんはさっきまで、しらばっくれてトモ君に申し訳ないかなと思っていたのもすっ飛んで、立ち上がった。

「違うの!昨日、トモ君がウチにチョコレート持ってきてくれたから、仕方がないから、お母さんが買ってあった、お母さんのおやつ用のチョコレートをあげたのっ!」

言ってしまってから、しまったと思った。仕方がないからとは、いくらなんでもひどい。

「そうなの?とも君」

センスのない先生は聞いた。

トモ君が黙って頷いた。みんなはさっきまでの興奮が一気にしぼみ、なぁんだ、なぁんだと言い出した。

よかった。よかったけど。

とんちゃんはやっぱり、その日、トモ君の方を向けなかった。