ただの毎日の中で。専業主婦の平和すぎる日常

自分の思っていること、ちょっと引っかかったこと。誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

一年生のバレンタイン

一年生のバレンタインデー。

近所に住んでいる幼稚園の時からのお友達のトモ君という男の子がいた。

大人しくて、絵と工作がとても上手な子だった。

一年生の頃のとんちゃんはお転婆で気が強くって、弱いものいじめは許さないっていう感じの女の子だったから、トモ君は嫌いじゃないけど、つまんないなって思っていた。

そのトモ君が、ある晩、ピンポーンとやってきた。

もう、夕ご飯を食べようかっていう時だった。

お母さんが玄関のドアを開けると、そこにいたトモ君が何かしゃべり、それを聞いたお母さんが私を呼んだ。

「とん〜。トモ君が何かゴヨウみたいよ」

何だろう。宿題の場所教えてっていうのかな。今日、宿題あったっけ。

行ってみたら、トモ君は綺麗な真っ白の紙にピンクのリボンがかかった四角い箱を持っていた。

「これ。バレンタインデー」

びっくりした。テレビでそういえば、そういうのがあるってコマーシャルやってたけど、あれって大人がやるものだと思ってた。それに、あれは好きな人に女の人が渡すんじゃないっけ。

「あっらぁ。ありがとね。あっらぁ。」

声を弾ませて返事をしたのはお母さんだった。とんちゃんは受け取ったものの、照れ臭いし、困るし、どうしようと思いながら突っ立っていた。

そこにまたお母さんが出てきて

「ごめんね。何にも用意してなくて、これ、うちにあったのだけど、お返しに」

と言いながら、私に買い置きしてあったチョコレートをむき出しのまま持たせた。

え。いやだよ。だって、チョコもらって、これあげたら、なんか、両思いみたいじゃん。

その通りには言わなかったけれど、「え、でも、だって」ととんちゃんは抵抗した。

するとお母さんはものすごく怖い顔をして

「いいから!」と睨んだ。

しぶしぶ、「じゃ。これ・・」とモゴモゴ言いながら渡された板チョコをトモ君にあげた。トモ君は、明らかに嫌がっているやりとりをずっと見ていたのに、嬉しそうに

「ありがとう」

と言ってもらって帰って行った。

はしゃぐお母さんにもトモ君にも腹が立って、とんちゃんはそのもらったチョコレートを食べなかった。

「あ、じゃあお母さんがもらっちゃお」

もう。信じらんない。

一年生の冬だった。