お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

私の居場所

夫の単身赴任の準備を一人、地味に淡々と進める日々。

昨日は100円ショップで細々したものを一気買いした。

洗面所に置く、コップ、一人で食べる食事の茶碗、など、揃えているうちに不憫になってくる。せめて、箸は陽気な緑の縞が入ったものにしてやろう。せめて洗面所のコップくらいはピンクのハートが飛んでいるものにしてやろう。どれを選んでも100円なので、思う存分、派手で陽気な色柄ものをかごに入れた。

今日は母と墓参りに行く。父方の祖母の誕生日なのである。生誕108歳。この人も、今、生きている方の母方の祖母に負けず劣らず、気の強い、元気な人だった。父が62歳で死んだ時、91歳だったが、その時は、まだかくしゃくとしていて、株もやっていたし、洋裁もしていた。当時、2歳だった息子と、茹でたトウモロコシを本気で取り合いもしていた。父の癌を彼女には高齢だし酷であろうと、みんなで隠していた。だから最後の入院も、当然、息子は帰ってくると思っていたのに、死んでしまった。その晩、祖母は声を叫びあげ泣いていた。自分の部屋で。そこから、急に生気を失った。二年後、風邪を拗らせて、簡単に逝ってしまった。気も強く、かなり頭が良く、それゆえの底意地の悪さもあった。母は相当泣かされたと今でも恨んでいるようだが、私は好きだった。

本当は一人で行きたかった。

祖母のことを本当に好きではない母とは行きたくなかった。しかし、あえてそこにこだわる母に「こなくていい」とはいえず、母も「私も行かなくちゃいけないと思っていたから」という。単身赴任準備の息抜きにならない。

テレビと雑誌に取材されたお蕎麦屋さんがあるから奢ってあげるわよと、母は10時半に出発と、昨夜言って帰っていった。

お蕎麦は美味しかった。天ぷらもサクッとしていて、教わりたいくらいっだった。

墓地も抜けるような青空の下、いい空気が流れていた。

そこでゴシゴシとタオルで墓石を磨く。生誕、108歳、おめでとう。空に響くよう、大きな声で、孫の、子供だった頃の私のような口調で言いながら、力を込めた。

ここには父もいるけれど、いつも、父にばかり話しかけて、祖母には誰も声をかけない。今日は祖母にだけ、話す。主役だから。

 

渋谷で母と別れ、ほっとする。やっぱり、妙な緊張をしていたんだ。ビッグカメラで赴任先のインターネットの設置の相談をする。少し、自分に戻った気がする。

店員さんがやたら専門知識に深く、丁寧に説明してくれるのが嬉しい。この人はここがぴったりの居場所なんだろう。生き生きと自信にみなぎって見える。

自分はここに馴染んでいない。母と一緒の時より、自分らしい自分になっているけれど、今の私もちょっと違う。

デパートで、服を見る。全然、居場所がない。いて、ワクワクもしないし、居心地も良くないし、店員さんに話しかけられそうになると、逃げるくらい、馴染めていない。

ツタヤに行ってみた。あぁ。ここだ、ここだ、本、コーヒー、DVD,この感じなら居やすい。中学生の時に夢中になって読んだ本の復刻版が出ていたので、迷ったけれど、買う。1400円。SFの少女漫画チックなラブコメディだった。登場人物のコテコテの胸キュン会話に今でもキュンキュンした自分が嬉しかった。これを手元に置こう。いつでもキュンキュンできる。

浮かれて、一番上のフロアのアート専門を除いた。ロックがかかり、前衛的な写真集や、ファッション哲学の本、渋谷の一番とんがったものがたくさんあった。

自分の時空間とかけ離れた世界。ここまで翔んでしまうと、居心地云々よりも、強い刺激に惹かれた。つい、何冊か手を伸ばす。BGMの大音量と客層の会話の速さと、そこに置かれている商品の主張の強さに数分もいると、頭の奥が痺れてきた。なぜか急に足がガクガクして、強い睡魔に襲われてきた。

 

帰ろう。もう、帰ろう。

フロアを降り、SFラブコメを買い、地下鉄に乗って自分の駅に着いた。

駅の上のいつものドトールでブレンドS、220円。本を広げる。

ゆるい、音楽と、近所のおばちゃんたちの会話。ああ。ここだ。

自分に戻ってきた。

家に着く。台所に立つ。

そう。やっぱりここだ。ますます自分に近くなる。

そうだ、この自分の居場所に感じる違和感と居心地について思った今日のこと、書こう。食事の支度が済んで、家族が帰ってくるまでの今、パソコンを開く。

ブログを書き始めると、夢中になって話し出す私。

今日ね、お母さんとお墓参り行ってね、嫌だったんだけど、でも仕方ないからね、行ってね、お蕎麦食べてさ。でもやっぱりあの人とは居心地良くなくて、それで別れてから、落ち着く自分に戻りたくて渋谷ウロウロしたんだけど・・・。

 

あぁ。

湯船に浸かった時に漏れる、ああぁ。。

今の私は、この場所が一番自分自身に戻れるところだ。

そのための1日だったのかもしれない。今日は。