お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

2017-08-04から1日間の記事一覧

一郎くん

5年生の夏休み。 夕ご飯を食べていると一郎くんがやってきた。 「とんちゃん、星の観察いくよ」 学校の宿題で一時間ごとに夜空を見上げて、星座がどう動いたかを観察して、ノートに書くというのをやるためだ。 一郎くんはこの新興住宅地の団地に越してきた…

ピアノの発表会

ピアノを弾き終え、舞台から降りて、廊下に出ると、お父さんとお母さんがいた。長い廊下の向こうの端にお父さんが前でお母さんがその後ろに立っていた。 お父さんは顔じゅうで笑って、私が出てくると両手を大きくパッと広げた。 私は緊張が解けたのと、その…

トースト

冬のキーンと寒い日。四時間目のことだった。 二年生のクラスで国語の時間、いきなり先生が「外、散歩しよう」と言った。 私たちは学校から外に出て歩くっていうのが、特別な感じがして、きゃあきゃあ声をあげて喜んだ。 背の小さい子から順に、男女二列に並…

褒められた記憶

小学5年生の時。 学校の廊下で。 一階の職員室の並びに放送室があった。 いつもそこの扉は閉まっているのだけれど、その日はなぜか半開きだった。 放送室のドアは防音の綿が付いているから分厚くて重い。 放送委員の私はそれを知っていた。 その前を通り過ぎ…

クローバーの首飾り

母の日に。 クローバーでは首飾りを作ってお母さんにあげた。 「わぁありがとう」 母は喜んで、一日中、首にかけていてくれた。 私は嬉しかったし、少し、得意になった。 お母さんを喜ばせた。私が喜ばせた。幸せな気分にした。 次の日、母の首が真っ赤に腫…

買い食い

ガールスカウトの帰り道、駅の売店でお友達と買い食いをしているところを母に見つかった。家から遠く離れたところだったので、ここなら大丈夫と油断していたのだが、そういう日に限って、お母さんはバスに乗って駅近くの大きなスーパーまで買い物に来たのだ…

一年生のバレンタインの後悔

「昨日チョコレートもらった人〜、手をあげて〜」 次の日、担任の女の先生が教壇に立って、自分が手を手を挙げながら言った。 小学一年生にとってバレンタインデーなんて、お遊びみたいなものだから構わないだろうという大人の発想なんだろうが、なんでこの…

一年生のバレンタイン

一年生のバレンタインデー。 近所に住んでいる幼稚園の時からのお友達のトモ君という男の子がいた。 大人しくて、絵と工作がとても上手な子だった。 一年生の頃のとんちゃんはお転婆で気が強くって、弱いものいじめは許さないっていう感じの女の子だったから…

未来の私とつながるつもりで

見つけた。 新聞作りを続ける方法。とてもいい方法だと思う。 私新聞。私の日常を私が記事にして書く。読者は未来の私。85歳くらいになって、冬の寒い日、家の中でぬくぬくしながら私が読むのだ。 読者が自分自身なのだから、あれを書いてはいけないとか、こ…

飛び込んできた言葉

「それと、先のことが不安でない人間なんて、この世にいませんよ。お金があっても美人でも、見えない明日は不安です。あなたも私も誰も彼も、生きていることは不安で悲しいのです。」 フラフラと迷い込んだサイトで脚本家の大石静さんが誰かの悩み事に答えて…